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    第15話 『有紗の勇気』

《3》

週末、有紗は品川駅で、母を探した。有紗は3人娘の真ん中で、母の30歳のときの子だった。

新幹線の中央出口からちゃんと出てくるだろうか。間違って高輪口に行ったりはしないだろうか。中央口と言ったはずだが、と、有紗はおなかをおさえながら、きょろきょろと見渡した。

「おかあさん、おかあさーん」

1階中央口の改札の向こうで、やはりきょろきょろと周りを見ながら、グレーのコートで小さな黒いキャリーバッグを転がす母親が見えた。
老けたな、と有紗はその姿にちょっと泣きそうになった。東京で見る67歳より、ちょっと老けて見えた。

母親は有紗を見つけると、笑って改札を指差し、ここを出るのね、と指で合図した。

「そうそう」

2年半ぶりくらいに会った二人は、連れ立って歩き始めた。

「新幹線、混んどう?」

「混んどった。この頃は外人さんだらけやな… おなか、大きいな」
「うん」

「どっちか聞いたんか」

「男の子みたい。生まれてみたら違ってた、ってこともあるらしいけど」

「そら、よかった」

有紗は、いつ謝ろうかとタイミングを見計らっていた。黙って上京してしまったこと。黙って結婚してしまったこと。
もうひとつ、謝ることではないが、莉奈を引き取ったという事実も話すべきだった。

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