《3》
「ということになってぇ、秋分の日の連休に、そっちへ帰るから」
未知が母親に電話すると、母親はわかった、と言いながら、一言余計なことを言った。そこが未知に受け継がれたところだった。
「写真見たよ。細い人だね」
こまい、という言葉は、背が低いという意味でもあった。
「うん。…お父さん、どうって」
「お父さんは、未知がそんなえらい家の人に見初められて、って驚いとった。何でもてなせばいいかね」
「おかあさんのご飯がおいしいよ」
「そっかなあ、田舎料理だけど」
母親は憎まれ口を言いながらも、本当に嬉しそうだった。幸はテーブルいっぱいの料理を思い浮かべて、にやにやした。
家族が喜んでくれるなら、この結婚はいいのかもしれないと思った。