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    第1回 青西絵理子さん
    (株式会社日本香堂R&D事業本部 研究室課長)

香りをつくるということ

OEDO-KOH

調香師さんが入社して、日本香堂のお香の香りバリエーションは非常に広がりました。
「シングルノートの『かゆらぎ』は、わかりやすく選んでいただけるのではないかと思います。香りの世界旅行『fm(フレグランスメモリーズ)』では、香りのイメージをわかりやすくするために、香水の香り説明などに使われる『キーノート』を採用しました。香調表現を考えるのも楽しい仕事です。

「お香は火をつけると700~800度。微煙のお線香は炭粉が使われているので800度以上にもなります。有煙のお香はもう少し温度が低いですが、軽やかな香りをお香にするのは難しいです。でもこのfmシリーズは、繊細な香りをつくるように心がけました。
どんなベース処方が香料に合うか?という模索も重要なんです。

インバウンド向けに開発された江戸の物語をイメージしたシリーズ「OEDO-KOH」も、国内でも人気になっている。

「香料だけではない、数々の生薬との調和を大事にしています。 いい香りだけを集めても芳香にはならないんです。どこかに少しだけ違う香りを入れると、ぐっとまとまるんです。たとえば甘松という生薬はちょっと蒸れた靴下みたいな香りですが、効果的な隠し味になってくれるんですよ」。

仕事の基本に「香の歴史」あり

青西絵理子さん③

銀座本社の香間は銀閣寺の弄清亭を模してあるそう。青西さんたちも「香道」御家流にいそしむ。

「香原料は仏教と共に日本に伝来してから、お焼香や抹香、塗香が仏前で使われるようになります。平安の頃には調合を楽しむ丸薬状の薫物が焚かれるようになり、空間や衣類への移り香を楽しむようになります。
また鎌倉時代頃から沈香一木を聞香するようになります。闘香や香合せなどがされるようになり、東山文化の頃に芸道としての『香道』が始まります。
『香道』では和歌や物語などをテーマに組香が行われます。『六国五味(りっこくごみ)』といって、六つの木処と五つの味わいを聞き分けますが、火の強さやトップ・ミドル・ラストのどの段階で聞香しているかでも香りが異なります。
香りを細かく分析しすぎると聞けなかったりして、ずっと以前、調香師さんたちのお香会ではみなさん当らなかったことがありましたよ。
お線香が伝来したのはその後なんですね。お香は歴史も文化も深くてとても興味深いです」。

「香をたきたいけど、たけない場所でも使えるお香を考えたい」

香菓

時代とともに環境とともに、香も進化を迫られている。
「たとえば『やさしい時間』というシリーズは、初めてお線香を使う方がリビングでお供えすることをコンセプトに、煙や灰が少なく軽やかな香りにしています。またお線香を折ってお使いの方には真ん中のくぼみで真二つにすることができます」。

青西さんは、さらにその先を見据える。

「老人ホームなどに入られる方も多いですよね。そこでは線香をたきたくても、たけなかったりする。でもそういう場合でも使える線香はできないか。そんなことを考えますね」

香を考えることは、人の思いに寄り添い、暮らしを考えることとつながっている。青西さんの挑戦は、静かに、やさしく続いている。

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取材・文 森 綾 https://moriaya.jimdo.com/
撮影 ヒダキトモコ https://hidaki.weebly.com/

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2016.4.20 written by 森綾

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