寒い日が続く今年の冬。暮らしの中に香りがあれば、暖かさの感じ方も違ってくるようです。
今回は、前回のクリスマスに続き、葉山の恩田家におじゃまして、ケイティーさんのお嬢様、ルーシーさんに、イギリス仕込みの香り豊かな美味しいチャイの作り方を教わります。お香も、お茶の香りをほのかに漂わせて。
ケイティーさん、ルーシーさんの親娘は、Instagramで、一緒にお料理しながらトークするシリーズを続けています。お互いを知り尽くした2人のトークは「近頃の湘南」を知るにも、発想豊かな料理を見るのも楽しいひととき。
あれ、こんなに簡単なんだったら、お料理やってみようかな、と思う人も多いはず。
今回も、Instagramに登場する実家のキッチンで、香り豊かな美味しいチャイを作ってもらいました。
キッチンに一歩踏み込むと、壁には紅茶の缶がずらーり。
そして、イギリスのアンティークの器を輸入しているお二人の好みのカップが並んでいます。
ルーシーさんは言います。
「ティーンの頃はあまり好きじゃなかったんですが、イギリスのアンティークのカップの特徴であるオリエンタルなテイストが最近はとても好きです。1800年代から1900年代にかけて、ヨーロッパには東洋への憧れがあったのですね。シノワズリ、と言うのかな。だから、日本の古伊万里などの骨董ともよく合うんです。大皿にはそういう日本のものを使ってお菓子を載せて、ティーカップはイギリスのアンティークでお茶の時間を楽しむと言うことは多いですね」
本当に見ていて違和感がありません。器同士の心が通じ合うような空間に、思わずほっこりしてしまいます。
さて、チャイを作ってもらいましょう。
取り出した大理石のまな板は、ルーシーさんがケイティーさんの誕生日にプレゼントしたもの。
「このまな板は、スパイスの皮や薬味などを潰したりするのにとても便利です。生姜を潰して刻みますね。後はシナモンを割って、八角、潰したカルダモン、クローブ」
それぞれのスパイスの香りは、それぞれもとても個性的ですが、一緒になることで複雑味を増し、なんとも良い香りに。
「私はカルダモンとクローブを絶対に入れます。体があったまるし、良い香りです。ホットワインなら、オレンジやリンゴの皮を入れますね。ミルクと水は1対1ですが、ミルクが好きなら多めでも。今日は濃縮牛乳を使いますね」
お鍋に水を入れ、スパイスを煮出します。そこへ茶葉を。
「普通にティーバックを使うなら、破って茶葉だけを使ってください。今日の茶葉は、味が濃く出るCTC製法のアッサムを使っています。ミルクティーによく使う、濃く出るもの。渋みもあって、それが甘さを引きてててくれますよ。ある程度スパイスを煮出したら、最後に牛乳を入れ、沸騰直前まで温めて、好みの甘さに砂糖を加え、最後にこします」
美味しいチャイが出来上がりました。オリエンタルなイギリスのアンティークのカップに注ぎ、ケイティーさんが手作りしてくださったアップルケーキをいただきながら。
「そもそもチャイってなんでできたと思います?」
そんな話になりました。どうしてでしょう。インドでよく飲まれているような気がしますが。
「そう、なぜインドではチャイが飲まれるようになったのか。それはね、インドはイギリスの植民地だったから、優良な茶葉はイギリスに輸出されてしまうんです。彼らは生産してもそんなに良いお茶が飲めなかった。だから、お茶を美味しく飲む方法として考えたのですね」
ちょっと切ない話ですが、そのチャイがさらに美味しく香り高くなって、今は世界の人たちを楽しませてくれているのです。
ルーシーさんにお茶の香りのお香をお勧めしてみました。
「本当にお茶の香りがしますね。良い香り。すごく空間にゆったり広がりますね」
トップノートにコリアンダーやナツメグといったスパイスの香りもほのかに入っているので、お茶の時間や食後にもぴったりなのでしょう。
「そういえば、ストーブポットポプリと言って、料理の後の匂い消しにオレンジやリンゴの皮とバニラエッセンスをお湯に入れて煮立てたりするんです。こんなふうにお香もその代わりをしてくれるのですね」
天井の高い広々としたリビングに、エスプリ・ド・テの柔らかい香りが広がると、外には出たくないような気分になりました。
photo by Yumi Saito
http://www.yumisaitophoto.com/
Text by Aya Mori