名刺を差し出すとき、ほのかに良い香りがしたら、好印象になることは間違いありません。
たくさんの人と仕事をし、対人関係に繊細な心配りをする人は、そんなところにまで気を遣っているものです。
過去にはSDGsを先駆けた「大手町カフェ」、今は新丸ビル7階にある飲食フロアのプロデュースやイベント企画など「人と人のゆたかな出会い」をつくり続けている玉田いづみさんに、カードフレグランスの良さを語っていただきました。
街づくりのコンセプトから携わり、数々の商業施設のプロデュースを手がけてきた玉田いづみさん。
現在は、新丸ビル7階「丸の内ハウス」全体のプロデュースやイベント企画など、東京の都心のプロジェクトに携わる一方で、地方創生、東京大学駒場キャンパスにある︎「食堂コマニ」の企画・運営にも参画しています。
東京という視野にとどまらず「新しい日本の街づくり」を考え続ける彼女は、その忙しさをしゃかりきに見せない、穏やかで優しい空気が漂う人。
彼女が都心を変えることになった大きなきっかけは、18年前の「大手町カフェ」のプロジェクトでした。
「今でこそSDGsと謳われていますが、18年前は、坂本龍一さんたちが『ロハス』という共生社会の提案を始められた頃です。それまでは街づくり=環境破壊と捉えられることが多かったので、あえてそこで環境を考えるプラットフォームを作ってみようということになったのです。環境について興味のある人たちが集まって、情報を交換し、考えるための場をつくる。それが、大手町カフェでした」
玉田さんは、当時その地区の開発をしていた会社の社員として「街づくりの可視化」を目指します。
「大手町カフェは、金具一つしか使っていない再生可能なフィリップ・スタルクの椅子や、携帯電話をスクラップしたデスクなど、リサイクルを最高のセンスでデザインしたものを使っていました。そういった目に見えるものから、環境を考えてもらいたいという想いからでした」
新しいこと、新しい考えを人に理解させることの難しさを、コミュニケーションを取りながら解決していく。そんな並大抵に開かなそうな門をすっと開いていくように見えるのが、玉田さんのすごいところ。
「何かと立ち上げの時に呼ばれますが、0から1をつくるのは楽しいですね」
さらっとそう言う玉田さんですが、その言葉の向こうには、こまやかで一つずつを積み重ねる努力を厭わない姿勢が見え隠れします。
0から1をつくる彼女の強い想いと積み重ねは、例えば、今手がけている東京大学駒場キャンパスに「食堂コマニ」にも生かされています。
日本中の各地の安全で美味しい食材を集めた「食堂コマニ」は、おむすび一つとっても、米や海苔などにこだわりがあり、味噌汁の味噌、調味料に至るまで生産者とのつながりがあります。
「コロナ禍になる前に、東京大学の生産系の准教授と話していて、東大の学食を変えたいなあと思ったんです。だって東大は、日本の生産系のトップを担う人たちが育っていく場所なんですから。そんな折、東大から学食運営の公募があり、丸の内ハウスの『MUS MUS』の佐藤社長とチャレンジしました。生産研の先生たちといろいろ話し合い、学食から未来を変えようということになりました。『ダイニング・ラボ』というコンセプトで、大学の人だけではなく、いろんな人が集まってコミュニケーションが取れるプラットフォームをつくろうと。地域の人と繋がり、将来的には東大の技術もいかせるように。それで、コンセプト・ワードだけでなく、実際に現場に入って、8時半から豚汁を作って、メニュー開発もみんなでやっています」
食堂コマニの現場にも入り、丸の内の街づくりにも変わらず携わるタフな玉田さん。4月に改装された新丸ビル7階のテラスは、ぜひたくさんの人に訪れてほしい場所です。
「オーセンティックな街だった丸の内を、未来に開いて、チャレンジできる場所にしたかったんです。このテラスは自由にレストランのものをテイクアウトして楽しめます。『あれはやっちゃダメ、これはやっちゃダメ』になりがちなところではなく、退社後も楽しんでいただけるような街にしたい。エリアの外からの人も来てもらえるように。見えないところで管理はしっかり必要ですが、自由に遊べる方がいいじゃないですか」
彼女の仕事に共通するのが、あえて多様性と言わなくても人が自由を感じられる居場所づくり。そこに世界の一流のセンスを配することで、そのセンスがわかる人たちのコミュニティが生まれるということでしょう。
「来た人をちゃんと迎えてくれる、って大事ですよね」。
こんなにすごい仕事をいくつも手がける玉田さんは、年間、1000枚以上の名刺を交換しているそうです。
「丸の内の仕事も16年やってきていますが、まだまだ初対面の人が多いです。最初の頃はもっとそうでしたから、2万人以上の方と名刺交換しているでしょうね。いきなり一度に10人の人とお会いするということもありますし。本当は人見知りなのでドキドキしますが」
それだけたくさんの人と名刺交換していると、印象をどんなふうに与えるかと考えます。これまでも様々なカードフレグランスを試してみたそうです。
「私自身、飲食関連の仕事を始めてから、自分にフレグランスは付けないようになりました。それで、せめて名刺にと、香水を振りかけてみたらちょっときつすぎる。それで和の名刺香を使ってみたり。でもこのESTEBANは、洒落た香りがほのかに漂っていいですね。ほのかな、というのが日本人らしくていいなと思います。気づかなそうで、ふと気づく、くらいが」
一つずつのプロジェクトを完成させようという強い想いを抱きながら。玉田さんが決して押し付けがましくない、奥ゆかしいイメージをたたえているのは、そういう日本人らしい心を大事にしようとされているからかもしれません。
名刺から漂うほのかな香りは、働く人の心を香らせるのです。
photo by Yumi Saito
http://www.yumisaitophoto.com/
Text by Aya Mori