シャンソンという、フランスで生まれた音楽を10年歌い続けている松城ゆきのさん。
その香りに満ちた音楽は、彼女を香り好きな人にしたようです。
アクセサリーデザイナーのお母様とヨーロッパにも頻繁に旅するという彼女は、香りに向き合うように歌に向き合っていました。
10歳のとき、ミュージカルの子役でデビューし、だんだんと芸事の仕事をしたいと思うようになったという松城ゆきのさん。今はシャンソンを10年歌い続けています。シャンソンというと、美輪明宏さんやクミコさんら、円熟した大人の激しい歌という印象があります。が、松城さんは透明感のある柔らかな印象のある人。
「そうですね。美輪明宏さんの『ヨイトマケの唄』のような憑依型のシャンソンではないかもしれません。歳を重ねればそうなれるのかな。本当に若さが武器にはならない世界なんです」
お客さんに「君に『マイウェイ』を歌われても響かないよ』と言われたことも。
「でも、また別のお客さんが『どんな人にも若いときはあるし、歌とともに育っていけばいいんじゃないの』と言ってくださって。確かに1年目にうたっていた歌を今うたうと違う。歌に育ててもらっているのかな、と思いますね」
そもそもミュージカル女優をしていた彼女がシャンソンに入ったきっかけは、たくさん歌いたかったから。
「オーディションに合格して年間1本とか、2本とか。そのために2〜3ヶ月稽古して、そのほかは別のアルバイトをしたりしていると、歌からどんどん遠くなってしまいます。シャンソンは、都内にいくつかライブハウスがあり、毎晩歌うことができるんです。最初、お酒を飲んでいる人の前でうたうことを親は心配しましたが、私は歌手にしてもらったのはシャンソンだったと思っているんです」。
歌詞を大切に真摯に歌い続ける彼女に待っていたのは、今度はポップスの世界でした。
今年50周年を迎えるシティポップスの大御所作曲家、林哲司さんが、彼女をプロデュースすることになったのです。
そういえば、フレグラボのスペシャルインタビューに出てくださった林さんは「シャンソンの歌手でいい人を探している」とおっしゃっていたのでした。
「作詞家の先生方にはお会いしていないのですが、松井五郎さんら6人の先生が私をイメージして書いてくださいました。だから6人の松城ゆきのを楽しんでもらえるかと。お芝居をするようにうたっているので、それはポップスもシャンソンも同じです。他人事ではなく、自分の中のことと置き換えてうたっています。人だったり、街だったり、風だったり。愛しているとうたうときはそれを見つめてうたいたいと思っています」
2ndシングル『刻印/mon amour 雨音』が発売になったばかり。
一曲一曲を演じる彼女らしいドラマが浮かぶ、素敵な曲です。
物語をうたうことができる松城さんは、暮らしの中で香りにもストーリーを演出してもらっている様子。
「アロマデフューザーは、化粧室はこれ、洗面所はこれ、車のなかはこれ、というふうに変えています。シャンソニエはうたう前に香水を振る人も多いのですが、私も好きな香りを持ち歩いています。ukaの香るネイルオイルは、それぞれつける時間が決まっているのですが、それもその通りに」
そして、生活のなかの香りをうたう前にリセットするのは、コーヒーの香りなのだとか。
「本番前に必ずホットコーヒーを飲むのが習慣なんです。儀式のようなものですね。デパートなどで香水を選ぶときも、コーヒー豆をかいでリセットするじゃないですか。あの感じなのかもしれません」
身につけているお気に入りは、ディオールの「LUCKY」。フランス語でミュゲ、すずらんの香りです。
「フランスの気分をまといたいと思うときに、ミュゲなのかなと。ミュゲの日があるくらいですから。シャンソンにはいろいろな花の香りが出てきます。バラも、リラも」
松城さんのお母様はアクセサリーデザイナーで、ヨーロッパはしょっちゅう出張へ行く場所。
「母の鞄持ちで、よくついていくんです。フランスはもちろん、イタリアも好きです。イタリア人の陽気な圧が好きなのかな(笑)。彼ら彼女らが自分の好みをちゃんと主張できることにはとても憧れますね。私は”ど日本人”なので、なかなか言えないところがある。歌のなかでは違う自分でいられます」
そんな彼女に ESTEBANの「インテリアガーデンナチュール」のシリーズから、レモングラス&ミントを試してもらいました。
「とても爽やかですね。お化粧をするスペースで、朝、香らせたい香りです」
1日を始めるまっさらな気分に、この香りが似合うようです。
いろんな色を演じてうたう彼女の、白いキャンバスのような心に似合うのかもしれません。
●松城ゆきのさん公式ページ
https://www.yukinomatsuki.com
photo by Yumi Saito
http://www.yumisaitophoto.com/
Text by Aya Mori