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瀟洒な人々が集うサロンとして銀座の芳しさを現代に。資生堂創業家5代目が広尾・La Salle Fに込めた想い
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    資生堂創業家5代目が広尾・La Salle Fに込めた想い

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 東京・広尾に、誰の耳にも心地よく響くスタインウェイD型を備えたサロンホール「La Salle F」が誕生しました。オーナーは、資生堂創業家5代目で、株式会社アスム代表取締役執行役員社長の福原和人さん。自らもピアノやヴァイオリンを奏でる福原さんは、もともとは研究職でフレグランスの開発も手がけた経験があります。そんな粋人がこのサロンに込めた想いは「資生堂と銀座」の歴史とともに今も香り立ちます。

「ものごとはすべてリッチでなければならない」。豊かさをどう感じてもらうか

 エレベーターから出ると、歴史を感じるような煉瓦の壁、そして大きなコンサートホールのような重厚な扉が。
 その扉を開けると、あたたかな存在感をもつフルコンのスタインウェイが出迎えてくれる「La Salle F」があります。
 オーナーの福原和人さんは、ここをサロン文化復興の象徴になればと考えています。

「資生堂は、1919年に資生堂ギャラリーを創設しました。ここは現存する日本最古のギャラリーで、当時のサロン文化を象徴するものだったようです。芸術家、文化人、財界人…洒落心をもって美を尊ぶ人たちが集まっていた。そういうものを現代に再現したいと思ったのが、ここをつくった最初の想いです。現代には現代のコミュニティのあり方があり、そこには人をひき寄せる強烈なコンテンツが必要だと考えました」

 たとえばゴルフが好きな人は、雨の日も風の日も嬉々としてゴルフ場へ行きます。福原さんがそのコンテンツとして選んだのは、自らも嗜みのある「音楽」でした。

「資生堂初代社長となった福原信三は、自らが創り上げた美学を象徴するような言葉を遺しています。その一つに『ものごとはすべてリッチでなければならない』という言葉があります。リッチな体験が必要だというのです。リッチさをどう感じていただけるかが大事なんだと。つまりそれは心の豊かさにつながっているのです」

 そこで、福原さんはひとつのリッチなコンテンツとして、フルコンのスタインウェイD型をここに置いたのです。
 1000人規模のコンサートホールでようやく見られるような大きなピアノ。このサロンは最大90席ですから、かなり贅沢なものです。

「幼い頃から習っていたピアノですから、どういうものが良いのか、見極めやすかったというのもあります。ピアノにもいろんなタイプがあって、玄人好みのマニアックなものもありますが、ここに置くなら、一流の芸術家が弾いても、芸術家の卵のような人たちが弾いても良い音色を出してくれるピアノがいいと思ったのです」

 選ばれたピアノを弾いてもらうと、音響設計の行き届いた空間の響きと相まって、実に優しくまろやかな音色が流れ始めました。
 このピアノを弾く人も、それを聴く人も気持ちが豊かにひとつになっていくような音色です。

「すでに発表会などの予約も入っていたりします。また多目的ホールとしても使っていただけるようになっています」。

福原和人さん

香り。音。理論的な数値を超えたところに現れてくるものがある

 もともとは資生堂の社員として研究職だった福原さん。2014年から2016年はフランスに駐在し、香りの本場の国で、フレグランスの開発に携わっていたそうです。

「資生堂はイッセイ ミヤケ、ナルシソ・ロドリゲス、セルジュ・ルタンスの香水もライセンス契約していました。こうしてワインのように、マグナムボトル(非売品)もあったりします」

 なかでも思い出に残るのは、オリジナルの香水として発売した『Ever Bloom』に携わったこと。Everbloomは直訳だと「絶えず花をつける」という嬉しい意味があります。

「福原信三の時代、日本で初めてオリジナルで発売した『花椿』という香水がありました。そのオマージュも込めて作った香水です」

 どこか懐かしいような、清潔感があって安心できる花の香り。日本人が考える「上品」という言葉を思わせる香りです。

 資生堂は『花椿』という雑誌を刊行していますが「椿」とどんな関わりがあるのでしょうか。

「創業家と出雲大社は縁が深く、椿を寄贈されたという歴史があるのです。それで、もともと資生堂があった銀座8丁目は出雲町と呼ばれていました。今はそのまま『花椿通り』もあります」

 縁結びの神様と言われる出雲大社に守られているなんて、素敵なお話です。

 福原さんは香水の開発に携わっていたとき、香りそのものだけでなく、液体の色やパッケージの造形も含めての「香水」だということを学んだと言います。

「スキンケア→メイク→香水。矢印の方向へ行くに従って、薬剤からファッションの要素が濃くなっていきます。香水はもはや着るもの、まとうもの。だから匂いだけではなく、ボトルのデザインや液体の色の重要性を考えていましたね。非常に緻密な設計が必要です。ただ上司に言われたのは『最終的には自分の目で見ていいか悪いかで判断しなさい』と。感性の世界なんです。最後の最後は自分の感覚で判断するもの。それは音響も同じです。空間での音の響きは、理論的な数値だけではないものが現れてきます」。

福原和人さん

日本人は「水で清める」という発想を深くもっている

 香りと日本人との関係では、福原さんは「水」が切っても切れないものだと考えています。

「化粧品も、ヨーロッパは油分を重視します。クリームが基本。ところが、日本人は化粧水から始めるのがオーソドックスです。だから日本のメーカーがヨーロッパにスキンケアを持ち込むのは難しいんです。これは僕の考えですが、その根本には『水で清める』という発想があるのではないかと思いますね。イッセイ ミヤケの『ロードゥ イッセイ』のような水の香りが一大ブームを起こしたように、日本人の精神性みたいなものを水が象徴したのでしょう。そうして、近年は、化粧品も香水もアロマコロジー…心理的効果が注目されているように感じます。日本の香りが世界で愛されるとしたら、そこにヒントがあるかもしれません」

 福原信三氏は「目には絵画。耳に音楽。鼻には何が芸術としてあるべきか。それを極めたい」という言葉も遺されています。
 五感を満たす豊かさは、このLa Salle Fでどのようなコミュニティーを醸成していくのか。銀座で生まれたサロン文化がここにまた咲くのがとても楽しみです。


●Le Salle F
公式サイト
https://lasalle-f.com/


photo by Yumi Saito
http://www.yumisaitophoto.com/
Text by Aya Mori

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