小仲正克社長対談
日本香堂ホールディングス代表の小仲正克が、会いたい人を迎え、フラットな目線で香りの面白さや、より深い楽しみ方を対話で伝える新連載。
第1回目のゲストは、株式会社センスケープ・デザインスタジオの代表で、日本でフレグランスの学校「サンキエムソンス ジャポン」も立ち上げられている小泉祐貴子さん。
Part2では、「サンキエムソンス ジャポン」の実態や、フランスの香料学校について、伺います。
小仲 小泉さんは、株式会社セントスケープ・デザインスタジオでは香りのマーケティングや商品開発もされていますが、一方で学校も主宰しておられますね。
小泉 フィルメニッヒに在籍したときの繋がりで、パリに本拠地を置く「サンキエムソンス 」、直訳すると、第五の感覚=嗅覚のことですね・・・・その名前のついたスクールの日本での展開を引き受けてくれないかというお話をいただきました。日本でも今、香りに興味のある人が増えていますし、アロマセラピーだけでは香りの勉強をカバーし切れないところがあるので。私の今までの経験を活かして何かお力になれるのであればと、お引き受けすることにいたしました。
2年半ほど前に「サンキエムソンス ジャポン」を立上げたのですが、個人の方向けにはオンラインライブという形で双方向の講義をしており、フレグランスメゾンや化粧品会社などの法人には香りのスキルアップのための研修もさせていただいています。
小仲 なるほど。次にええと、サンキ。。。江戸っ子には難しい発音ですね(笑)。サンキエムソンス。フランスにはその様な学校があるということがすごいですね、フランスの香料の歴史は。香料を座学として、原料、調香など体系化されている。フランスの香料に関する歴史や現状をお話いただけますか?
小泉 私もフランスの教育のあり方についてはそれほど詳しくないのですが。フランスには調香師になりたい人が多くて、昔から有名な調香師になるための専門学校があるんです。そこを卒業した人が調香師になれるかどうかというのはまた難しい話で、調香師の募集も少ないですし。そのなかの特に優秀な数名だけが、トップメゾンの香りの開発に関わることができるというくらい狭き門であると聞きます。
おそらくフランスでは調香の勉強をした後に、調香師にならなかったとしても、そのスキルを活かせる仕事が日本に比べれば多くあるのでしょう。
小仲 日本では、香りの仕事というと調香師を目指して、香料会社、化粧品会社に入るという風に考えられることが多いのでしょうね。
小泉 そうですね。調香師になるのは想像以上に狭き門であるという現実を知った上で、自分の将来の仕事を判断されると良いかと思います。調香師の仕事に憧れる人は多いですが、実際、香りを扱う仕事は調香師だけではなくて、企画・開発、マーケティング、販売といろんな職種があります。いろんな形で最先端の香りと繋がることができます。そういうふうに視野を広げていただくと、メーカーで仕事をするというのも、一つの選択肢になってきますし、いろんなスタンスがあると思います。
人によって適性が違いますから、調香師だけと思い込まずに少し視野を広げていただくといいなと思います。
小仲 やっぱりそういった意味ではフランスというと、香水の市場規模の桁が一つ違うと言われますが。歴史もあってのことですが、それでも調香師となると、狭き門だということですね。
今の話で、まず大学で座学を学んで、さらに卒業して専門課程に進んで、それから香料会社に入るというような人が多いんでしょうか。
小泉 専門学校として入学していくようですね。
画家になりたい人が美術学校に行くように、調香の学校に行くという感じです。
調香師は、採用してから10年でやっと一人前と言われますから、採用するときに若い方が将来、トレーニングした後に活躍する時間も長くなります。専門学校で学んだ後、現場でスキルを積んで、一人前になるのは30半ばという感じでしょうね。逆に30代から調香師になりたいと言ってもなかなか香料業界で仕事につくのは難しいのが現実ではないでしょうか。
小仲 例えば日本ですと、真剣に考えはじめるのは大学からだと思いますが。大学へ行って、博士課程に行くというフランスの方々はいらっしゃるんですか。
小泉 よほど学問の道を極めようと思わなければ、調香のことで博士課程へ行くというのは稀だと思います。専門学校は大抵2年間ですが、エコールスープリールパフメという学校は5年あるようですが。大学や専門学校で調香師になる道に進むためには化学を学ぶ必要があるそうです。