小仲 僕が興味を持ったのは「原料学」というコースがあるということです。我々も香原料を扱っていますが、フランスの方々は、原料をどこから入手するか、特に天然香料ですが、積極的で。もうラオスやベトナム、インドネシアに行っても、どこでもフランス人が手をつけているんですよ。
小泉 はい、そこはフランス人は貪欲ですよね。いまだに新しい原料を探しにあちこち奥地に行ってますからね。
小仲 昔の植民地とかそういうところから繋がっているからだとは思うんですが。そういう原料学のメソッドを学校教育座学としてやっているというのは大きな差だと思いますね。
小泉 日本でも、香りの学校教育に興味を持っている人は多いと思います。スクールの方にも「調香師になりたい」とか「香りの仕事をこれからしていきたいんですがどうしたらいいですか」というお問い合わせがあることがあります。なかにはパリに行って専門学校への入学を目指す方もいます。それくらい、深く興味のある人はいると感じています。
小仲 今、小泉さんのやられているスクール「サンキエムソンス ジャポン」では、どのようなことを教えていらっしゃるんですか。
小泉 香りの世界は世界共通の言語があるのが魅力ですから、変に日本風にせずに、フランスでみんなに伝えているものを日本でも同じように、同じ世界観で伝えることを大事にしています。
サンキエムソンス ジャポンとしては、ベーシック講座として、天然香料、合成香料、抽出方法など、香料そのものや香料業界について学んだり、「ファセット」という香りを表す専門用語としてグリーン、シトラスなど18種類を覚えていただくことを基本にしています。18を覚えれば、どんな香りも専門用語で表現することができるようになります。「ファセット」を勉強する初級編、中級編、上級編もあります。
他にも、名香水を歴史や時代背景とともに学び、どんな流れの中でその香水が生まれたのか、フレグランスが時代をどう反映するのかを識るという講座もあります。また、新しいフレグランスがたくさん出てきますから、半年ごとに世界的に注目すべきものを選んで、香りのトレンドを体感しながら学べる講座もあります。
小仲 学んでらっしゃる方の年齢層や職業などはいかがですか?
小泉 年齢層は幅広いですね。大学生から70代までいらっしゃいます。30~50代が多いかな。
小仲 趣味として知りたい方、本気で学びたい方、動機も幅が広そうですね。
小泉 次の仕事につなげたい方、香り関係の仕事を担当するので勉強したいという方が多い印象ですね。
サンキエムソンス ジャポンでは、パフューマリーの基礎知識から最新フレグランスのトレンドまで幅広くお伝えしています。
小仲 まず世の中の流れをきちんと理解しておくことが大切だということですね。
小泉 新製品を嗅ぐことを、意外と皆さん疎かにするんですけれど、香りの仕事をする上ではとても大切なのです。
小仲 競争相手だったりしますしね。心理的に先入観があるかもしれません。
小泉 話は変わりますが、サンキエムソンスには、ファセットの香りを使って調香を体験していただくという人気のプログラムがあります。何かを自分の手で混ぜるのが日本人は好きなのでしょうね。
お香も、昔の貴族たちは自分の処方を持っていたわけですから。お香を自分で作るワークショップがあったら、やりたい方は結構いらっしゃるのではないですか。
小仲 お香は「調合」というんですが、これは天然香料を混ぜるのに似ていて、原料のパレットをどれだけ増やせるか、それによってお香の香りも可能性が広がっていくので。でもそこが非常に楽しい。原料ソースの生産地によって香りの違いやボリューム感、価格も違いますし、割と時間がかかります。
調合好きからすると、本当にそこはみんな楽しめると思いますね。
小泉 オリジナルの匂い袋を作るとかも良さそうですね。
小仲 例えば古くからの塗香なんかも、化粧品のジャンルに入ってしまうと難しいかもしれないですが、ヨーロッパの人にも受けるかもしれませんね。
改めてですが、個人的には原料に興味があって、パレットを増やしていきたい。海外のものに目を向けながら、日本のものを深掘りしていきたいと思っています。ヨーロッパの原料学をやっている人は幸せな仕事だと思います。
小泉祐貴子さんプロフィール
https://scentscape.jp/about
サンキエムソンスジャポンのベーシック講座A開講。
https://www.cinquiemesens.jp/?pid=177923438
株式会社日本香堂ホールディングス
https://www.nipponkodo.co.jp/company/
構成・森綾(フレグラボ編集長)
撮影・萩庭桂太