ジャーさんのアルバムはドイツ、フランスなど世界に向けてパシフィック・ムーンというレーベルからも発売されています。このレーベルは、日本香堂のお香がCDに入っていて、ジャケットを開くたびにいい香りが漂います。
「普段、私はあまり香りのことを強く意識はしませんが、季節の変化は匂いで感じ取ることが多いですね。花が咲いたり、雨が降ったり。テレビの音楽紀行番組(BS-TBS毎週日曜あさ9時「こころ ふれあい紀行~音と匠の旅~」)で、日本のあちこちを旅していますが、土地によって変化する香りもあります。友人の家に招かれていい香りがするとそれも歓迎されているという気持ちになります」
香りは生きていく上でとても重要なものだとジャーさんは認識しています。
「香りは記憶を蘇らせる作用もあります。たとえ狭い場所でも、いい香りがすることによって広く感じることができる。それは今まで経験した景色が頭のなかに広がっているからかもしれません。心に奥行きをくれるのですね」
音楽も香りも、見えないもの。
「見えなくて感じるというものに、私は魅力を感じます。同じ香りでも人によって感じ方は違うでしょうし、無限に広がりのあるものですね。それは同じ曲であっても、受け止める人によって思い浮かべる景色が違うのと同じです。音楽に似ているとすると、そろそろ香りもデジタルになるのではないでしょうか。スマホのアプリからジャスミンの香りが出てくるとか…。想像できないものが生まれてくるかもしれませんね」
ジャーさんの二胡の音も、その時、その場所で、まったく違う香りだちを聴かせてくれるのでしょうか。
いつかとっておきの美しい場所で、いい香りを漂わせながら、二胡の演奏を聴いてみたいと思いました。
ジャー・パンファン プロフィール
中国黒竜江省生まれ。中国屈指の楽団「中国中央民族楽団」のソリストとして活躍するも、新たな表現の可能性を求め1988年に来日。国内外でソロコンサートを行う傍ら、様々なミュージシャンとの共演や、アルバム参加、映画・CM・TV音楽で活躍し、独自の音楽性を広げ続けている。これまでに発売されたオリジナルアルバムは世界各国で発表され海外のファンも多い。近年ではTV番組のナビゲーターを務めるなど活動の幅を広げている。
二胡の普及にも力を入れており、ヤマハから教則本やレパートリー集も多数出版。国内8カ所で二胡教室「天華二胡学院」を主宰。指導者やプロ奏者を輩出している。東京藝術大学修士課程修了。
オフィシャルサイト
http://www.jia-pengfang.com/
BS-TBS『こころ ふれあい紀行~音と匠の旅~』(毎週日曜あさ9:00~9:24)
https://www.bs-tbs.co.jp/music/kokorofureai/
CD
http://www.pacificmoon.com/home.html
取材・文 森 綾
フレグラボ編集長。雑誌、新聞、webと媒体を問わず、またインタビュー歴2200人以上、コラム、エッセイ、小説とジャンルを問わずに書く。
近刊は短編小説集『白トリュフとウォッカのスパゲッティ』(スター出版)。小説には映画『音楽人』の原作となった『音楽人1988』など。
エッセイは『一流の女が私だけに教えてくれたこと』(マガジンハウス)など多数。
http://moriaya.jp
https://www.facebook.com/aya.mori1
撮影 ヒダキトモコ
https://hidaki.weebly.com/