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    第10回:加藤登紀子さん(歌手)

《3》体臭はぬくもり。においのない清潔は人間らしくない

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登紀子さんには3人の娘さんがいます。まだ彼女たちが小さい頃、登紀子さんはある童謡をつくりました。

「長女が2歳くらいのときのことです。うちの娘はパパの臭いが大好きで、あるとき、2~3日、夫が出張で帰って来ないときに、長女が枕に顔をうずめて『あ~、なんでパパは帰って来ないの』と言ったんですよ。それは妻である私のセリフよね(笑)」それで「煙草と酒のにおいがしみ込んだパパのにおいが大好きだよ」って童謡を娘のために作ったことがありました。

登紀子さんは、そうやって人の体臭は悪いものじゃないと、お嬢さんに教育したのでしょう。

「無菌とかにおいのない清潔は人間らしくない。体臭ってぬくもりだし、たまらない良さですよね。いろんなにおいが立ち上ってこそ、生きているってことなんですよ」

《4》今年は「エディット・ピアフ」と「美空ひばり」を歌っていく

一昨年は自らのデビュー50周年でこれまでの集大成をうたい、昨年はエディット・ピアフの生誕100周年で、ピアフの歌をうたってきた登紀子さん。今年はエディット・ピアフと、美空ひばりの歌を並べるコンサートで全国を飛び回っておられます。

ピアフの歌は『愛の讃歌』をはじめ、登紀子さんともうぴったり一体になっているような気がします。

「もともと、19歳でシャンソンのコンテストに出たのが、この世界に入ったきっかけ。そのとき、ピアフを歌ったんですけど、シャンソンから距離をあけました。それで、いよいよ自分の訳で歌おうとしたら、夫が他界してしまった。「もしもあなたが死んで私を捨てる時も」という歌詞が辛くて歌えなくなってしまったんです。その3年後が40周年で、もう一度スタートラインに立つつもりで『愛の讃歌』を初めてレコーディングしたのです」

登紀子版『愛の讃歌』はそれから10年、多くの人の心に熱くささり、感動を与えてきました。そのとき「ピアフを歌ったら、ひばりも歌う」と、公言されていたと言います。

「ピアフの生い立ち、育った歴史的背景を学ぶにつけ、美空ひばりさんのことが浮かんだんです。でも、彼女の歌をうたうというのは覚悟がいりました」

彼女の心とは裏腹に、周囲のジャーナリストたちは、美空ひばりさんが亡くなった後、彼女の歌を加藤登紀子さんがうたうことに静かに期待していたようです。

「スポーツニッポンの小西良太郎さんには追悼文も頼まれました。お葬式にも参列しましたが、なぜか新聞上の参列者の名簿には私の名前は載っていなかった。その理由はわかりませんが、私が想像するに、彼女には『演歌の女王』のイメージがあって、それが私とは対極にあるイメージだったのかもしれません」

今回のアルバムには劇場での録音に加え、スタジオで録音された曲も加わって、『さくらの唄』、『みだれ髪』など名曲がオリジナル・アレンジで収められています。

どの曲も演歌というイメージはありません。

「『みだれ髪』はタンゴにしましたし、演歌のアレンジは必要ないと思いましたね。私は基本的に、美空ひばりさんの歌はブルースだと思っています」

登紀子さんの歌で揺り起こす「ひばり」の名曲の世界。

ピアフと重ねる必然性も、ライブで聴けばさらに伝わってくることでしょう。

CD

最新ライブ アルバム2枚組
「ひばりとピアフ」
価格:3,000円
発売日:5.28(日)
お問い合わせ:トキコ・プランニング tel.03-3352-3875

コンサート

「加藤登紀子コンサート~人生の始まりと終わり ひばりとピアフ」
5/28(日) 神戸国際会館こくさいホール
6/4(日) 山形・シベールアリーナ
6/11(日) 渋谷・Bunkamuraオーチャードホール
お問い合わせ:トキコ・プランニング tel.03-3352-3875

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加藤登紀子(かとう・ときこ) プロフィール

1965年東京大学在学中第2回日本アマチュアシャンソンコンクールに優勝し歌手デビュー。1966年「赤い風船」でレコード大賞新人賞、1969年「ひとり寝の子守唄」、1971年「知床旅情」でレコード大賞歌唱賞を受賞。以後、80枚以上のアルバムと多くのヒット曲を世に送り出してきた。国内コンサートのみならず、1988年、1990年のカーネギーホールをはじめ、世界各地でコンサートを行っており、1992年には、芸術文化活動における功績に対してフランス政府からシュバリエ勲章を授けられた。近年は、FUJI ROCKFESTIVALなど野外フェスにも意欲的に挑戦し、世代やジャンルを超えた活動で注目を浴びている。
2015年はデビュー50周年を記念し、ヒット曲「百万本のバラ」の生まれたラトビアのリエパーヤ交響楽団と日本ツアーおよびラトビアでコンサートを行った。
2017年は美空ひばりとエディット・ピアフの曲をオリジナルアレンジで歌うコンサート・ツアーを敢行中。


取材・文 森 綾
フレグラボ編集長。雑誌、新聞、webと媒体を問わず、またインタビュー歴2200人以上、コラム、エッセイ、小説とジャンルを問わずに書く。
近刊は短編小説集『白トリュフとウォッカのスパゲッティ』(スター出版)。小説には映画『音楽人』の原作となった『音楽人1988』など。
エッセイは『一流の女が私だけに教えてくれたこと』(マガジンハウス)など多数。
http://moriaya.jp
https://www.facebook.com/aya.mori1

撮影 ヒダキトモコ
https://hidaki.weebly.com/


2017.5.8 written by 森綾
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