プライベートでは韓流ドラマにはまっているという吉俣さん。自身も仕事で2001年、韓国でも大人気になった映画『冷静と情熱のあいだ』や、韓国SBSのドラマ『イルジメ〜一枝梅〜』のサウンドトラックも手がけられています。
「最初の韓国の仕事はチョー・ヨンピルさんの海外ツアーの音楽監督だったかな。ところが当時は現地のミュージシャンの技術がまだそんなに良くなくて。トップクラスのバンドだったにも関わらず、イントロのベースのフレーズを演奏できなかったんです。ところが今や、BTSはグラミー賞だから。進歩が早いですよね」
海外での仕事も持ち前のフランクさであっという間に良いコミュニケーションをとっていく吉俣さん。今年12月にはローマ・イタリア管弦楽団との約3年ぶりの再演も予定されているようです。
「どんどん国境を超えていきたい。技術がすごいというのなら、国内にもすごい人はいるかもしれない。でも、音楽はそれだけじゃないから。ひとりひとりの音楽家が生きているすべてが音になるわけですから。モリコーネのサントラを演奏した楽団、というだけでそれはまた僕の精神にもわくわくする息吹をくれるわけで」
吉俣さんは、改装したばかりのスタジオに我々を招き入れてくださいました。ウォールナットの落ち着いた木と深いグレーの塗壁。間接照明のなかに赤い皮張りのソファー。まるでラグジュアリー・ホテルのスィートのようなインテリアです。
「大きな仕事が終わると、ご褒美でNYのいいホテルに泊まることにしているんです。そんな海外のホテルの感じが好きで、今回はスタジオもそんなふうにして欲しいとお願いしました」
吉俣さんはそんな海外のホテルの香りが好きなのだそうです。
「NYのホテルでは、ジャスミンのお香をたきます。もともと、向こうのホテルってオリジナルないい香りがしますよね。それはその国の人の体臭もどこか入り混じっているのかもしれないけれど。なるべくそのいい香りを思い出すように、ディフューザーを置いたりしています。そんないい香りの中で、ピアノに向かうのと、嫌な香りの中でピアノに向かうのは違いますから」
ホテルのよう、と言っても、俳優の石倉良信さんにもらったという苔のオブジェがあったり、これまでの作品が並んでいたり、モリコーネのボックスがあったり。そして何よりも大きなPCとキーボードがあり、吉俣さんの仕事をしている場所という温度が感じられるのです。
吉俣さんが生み出す圧倒的な名作の量は、人としての器の大きさでもあります。これからも世界のさまざまな場所で、吉俣さんの音楽は人々の心を捉え、満たすことでしょう。
▼吉俣良さん公式ホームページ
http://www.yoshimataryo.com
▼『恋なんて、本気でやってどうするの?』公式ホームページ
https://www.ktv.jp/koimaji/
▼『恋なんて、本気でやってどうするの?』2022/6/1(水)Release
カンテレ・フジテレビ系月10ドラマ
『恋なんて、本気でやってどうするの?』オリジナル・サウンドトラック/吉俣良
取材・文 森 綾
フレグラボ編集長。雑誌、新聞、webと媒体を問わず、またインタビュー歴2200人以上、コラム、エッセイ、小説とジャンルを問わずに書く。
近刊は短編小説集『白トリュフとウォッカのスパゲッティ』(スター出版)。小説には映画『音楽人』の原作となった『音楽人1988』など。
エッセイは『一流の女が私だけに教えてくれたこと』(マガジンハウス)など多数。
http://moriaya.jp
https://www.facebook.com/aya.mori1
撮影 萩庭桂太
1966年東京都生まれ。
広告、雑誌のカバーを中心にポートレートを得意とする。
写真集に浜崎あゆみの『URA AYU』(ワニブックス)、北乃きい『Free』(講談社)など。
公式ホームページ
https://keitahaginiwa.com