原田さんは歳を重ねて、大学でコミュニケーションを教えたり、書道家として展覧会を開催するといった仕事も増えました。
「書道家は一人でも楽しめる。毛筆だけでなく、竹の筆や馬のしっぽの筆、いぐさなどを使って人が書かないようなアートな字を書いています。面白い字になるんです」。もっといいものが書けるんじゃないかと、また次の日も書きたくなる。先生がいたら『これがいいですよ』と決めてくれるかもしれませんが。キリがないです」
タレントやミュージシャンとしての仕事から、書道家の顔になるには、お香の力を借りているそう。
「仕事が忙しくて、でも展覧会までに何十枚か書かないといけない、という状況になると、同じ部屋で気分を変えないといけないこともあります。そういうときは、お香に火をつけて1本立てる。そして二胡の音楽を流すんです。ジャー・パンファンさんのCDをかけることが多いです。そうすると、パンとスィッチが入る。部屋が違う空間になるんです。すごく助けてもらっています」
いつも周囲にたくさんの人がいるイメージの原田さんですが、書道を楽しむようになって、一人の楽しみも覚えたそうです。
「ゴルフ、麻雀。今まで人と一緒にやる楽しみが多かったけれど、書道は一人で面白い。こんなに夢中になれることがあるんだなと、熱が冷めないですね。どこで辞めていいかがわからない。何かに夢中になれることをもっていることは大事ですね」
書道の展覧会の会場で、ギターで弾き語りをすることも。原田さんは好きなことが仕事で、仕事がまあるくつながっているのでしょう。そこにはたくさんの人との出会いがあります。
「人と出会って、コミュニケーションをうまく取るって、恥ずかしいと思わずにアホになれること。いろんな人と出会える人は、友達も多いし、失敗も多いかもしれないけど、成功も多い。美味しいことも多いんちゃうかな。失敗から新しい道ができるしね」
柔軟で心優しい人の奥にある強さを教えてもらった気がしました。原田伸郎さんのような生き方は、これからを生きる人たちにこそ響くのではないでしょうか。
▽書道展詳細サイト
https://www.sogo-seibu.jp/shibuya/topics/page/221115HaradaNoburou.html
取材・文 森 綾
フレグラボ編集長。雑誌、新聞、webと媒体を問わず、またインタビュー歴2200人以上、コラム、エッセイ、小説とジャンルを問わずに書く。
近刊は短編小説集『白トリュフとウォッカのスパゲッティ』(スター出版)。小説には映画『音楽人』の原作となった『音楽人1988』など。
エッセイは『一流の女が私だけに教えてくれたこと』(マガジンハウス)など多数。
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撮影 萩庭桂太
1966年東京都生まれ。
広告、雑誌のカバーを中心にポートレートを得意とする。
写真集に浜崎あゆみの『URA AYU』(ワニブックス)、北乃きい『Free』(講談社)など。
公式ホームページ
https://keitahaginiwa.com