ストリートから人気が出たアーティストには、根強いファンがつくようです。ファンレターやブログへのコメントも増えていきました。
「いただくメッセージには、恋の悩みが多いんです。特に多いのが『告白したいけどできません』っていう悩みでした。それに全部歌でお返事返しをしました。だから告白ソングがどんどん増えていきました」
告白ソングのなかでも代表曲となったのが、YouTubeで4500万回再生された『あなたへ贈る歌』。
「不思議なのは、10年前の曲なのに今も初めて聴く曲として聴いてもらえることです。知らないところで私の歌が広がっている。そのことをファンがまた教えてくれるんです。頑張ってプロモーションしなくても、聴いてもらえるのが、配信、サブスク… ソーシャルメディアの時代なのかな。中高生が聴いてくれているんです」
お返事がえしで作った曲は150曲くらい。ストリートで即興で作ったものは300曲くらいあるそう。
「アルバムを作るために曲を書く、というのではないんです。先にそうやって曲がたくさんできて、だからアルバムにしようか、となりました。コツコツ積み上げてきた。やっと私の時代がきたな〜」
曲作りは、0から1を生み出す作業。でもそれはericaさんにとってずっとやってきた、当たり前のことだったようです。
「子どもの頃、何にもないところから遊びをつくった経験が生きているのかもしれません。待つよりやる。ないからつくる。衣装もほぼ手作り。おばあちゃんの服をリフォームしたりもしました」
香りのするものも自分で調合するのが好き。
「エッセンシャルオイルと岩塩を混ぜて入浴剤にしたり。ルームスプレーやディフューザーも作ります。身ににつけるのは、香水よりもハンドクリームとかボディクリームの香りが好きですね。シャンプーの匂いがする、というくらいの香りがいいじゃないですか」。
ericaさんは自分を”保守的”だと言います。
「山梨県民ですから保守的ですよ! 何をやっても生きていけるように事務検定、パソコン検定、調理師免許、服飾の免許など取りました。フォトショップもイラストレーターも勉強しました。1人10役ぐらいできたらいいなと」
しかし資格取得に走る裏側の自分にも気づいていました。
「私は仕事も恋愛も、コミュニケーション能力に自信がなかったんです。誰かになろうとしていたのかな。今は自分が好きな自分になりたい。誰かになるんじゃなくて、自分らしい自分になりたい。歌も、恋愛だけじゃなくて、応援とか命とか、愛という大きなテーマを歌っていきたいと思っています。そして今までの旧譜も大事にしていきたい。夢は武道館ですね!」
新曲『ホワイト』で、ericaさんはこう歌っています。
♪ 不思議な時を経て尚ここにいれるのは
かけがえないこの世界 出逢えたあなたにありがとう
応援、命、愛、そして、感謝。彼女の歌はまだまだたくさんの人の背中を押すことになるのでしょう。
取材・文 森 綾
フレグラボ編集長。雑誌、新聞、webと媒体を問わず、またインタビュー歴2200人以上、コラム、エッセイ、小説とジャンルを問わずに書く。
近刊は短編小説集『白トリュフとウォッカのスパゲッティ』(スター出版)。小説には映画『音楽人』の原作となった『音楽人1988』など。
エッセイは『一流の女が私だけに教えてくれたこと』(マガジンハウス)など多数。
http://moriaya.jp
https://www.facebook.com/aya.mori1
撮影 萩庭桂太
1966年東京都生まれ。
広告、雑誌のカバーを中心にポートレートを得意とする。
写真集に浜崎あゆみの『URA AYU』(ワニブックス)、北乃きい『Free』(講談社)など。
公式ホームページ
https://keitahaginiwa.com