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    第197回:小谷実由さん(モデル)

《3》肩書きという言葉に縛られる必要はないし、肩書きがいくつあってもいい

 そんな彼女が最近大事にしているのが、ポッドキャストの仕事。J-WAVEの『おみゆの好き蒐集倶楽部』です。
 インターネットでアクセスすれば、いつでも聴くことができるラジオ。まるでラジオの文庫本のような気軽さが、今、リスナーを増やしています。

「ラジオで喋るのは好きです。それはここ数年、本当に強く感じています。以前からトークイベントでお話しする機会もあったりして、喋るのも好きだし、誰かの話を聴くのも好き。ラジオは別の何かをしていても入り込めるところが、性格にあっている気がして好きです。リスナーのお便りが読まれていると、ふだん私が出会わないような人の話も聴くことができるし、また自分が考えるきっかけにもなります。それが楽しいです」

 エッセイ、モデル、ポッドキャスト。ものづくり。ブランドとのコラボレーション。好きなことは全部自然と仕事につながっていく小谷さん。それは私たちが想像する以上に、大変なことなのかもしれません。

「そうですね。仕事が趣味みたいな感じでずっと考え続けているかもしれません。『好き』は、自分を証明するものだから、やってしまうし、やり続けたいんですね」

 表現ではなく、証明、という言葉をつかうところに、彼女の『好き』への確かな強さが伝わってきます。
 以前は、俳優業をやったこともありました。

「俳優の仕事は楽しいと思いましたし、良い経験ができたなと思いました。でも取り組むなかで、楽しいという気持ちだけではやってはいけないとも思ったんです。責任をもってやることができるのかと考えたときに、私が目指すのは、別の方向かもしれないと感じました」

 その言葉の裏を返せば、彼女は今ある自分の仕事に対してそれほど真剣に向き合っているということでしょう。

「モデル事務所に入ったのは、14歳のときでした。レッスンしたり、オーディションを受けたり。最初はそればかりの日々でしたが、それだけでも楽しかった。知らないことばかりだから、刺激があったんです」

 その後、さまざまなファッション誌、広告で活動の場を広げてきた小谷さん。

「長いことやってはいますが、モデル、と言っていいのかはわからない。今は自分が何を大事に思っているか。自分がいいと思うものを、誰かに伝えることを大切にしています。それを知ってくれたことで、何かのきっかけになる、そういう役目を担えるといいですね」

 Instagramの10万人以上のフォロワーは、これ見よがしでもなく、押し付けでもない、彼女の「好き」を率直に受け取っているようです。

「『いいでしょう』と見せたいわけじゃなく『こういうものがあるよ!』とお知らせしたい気持ち。受け取ってくれた人が何か次のアクションを起こしてくれたり、出会いにつなげてくれたり。そういうコメントをみると、自分が役立っているのかなと思えて嬉しいです」

 ある種、彼女自身が一つのメディアのような存在。それを通して多くの人が行動したり、発見したりしていくということでしょうか。

「情報が溢れている世の中で『何が好きかわからない』という言葉をよく聞きます。そこで情報迷子になってしまわずに、自分で見つけて、自分で紐とくことの面白さを知ってもらえたらなと思います。私は自分のやっていることを通じて、好きになりかた、も伝えられたら嬉しいです。肩書きという言葉に縛られる必要はないと思うし、肩書きはいくつあってもいい」

 これまでの日本は「何か一つの仕事を極める」ことが美徳とされてきたところがありますが、小谷さんのような生き方をする人がこれからは増えてくるのかもしれません。
 でも『これが好き』『これがいい』を本気で見つけ出して本気で伝えていく。彼女はそういうことを、極めようとしているのかもしれません。

小谷実由さん

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●小谷実由Instagram
https://www.instagram.com/omiyuno/?hl=ja

●J-wave ポッドキャスト
『おみゆの好き蒐集倶楽部』
https://www.j-wave.co.jp/podcasts/omiyu/

●『隙間時間』小谷実由・著
https://www.amazon.co.jp/隙間時間-小谷実由/dp/4990978277


取材・文 森 綾
フレグラボ編集長。雑誌、新聞、webと媒体を問わず、またインタビュー歴2200人以上、コラム、エッセイ、小説とジャンルを問わずに書く。
近刊は短編小説集『白トリュフとウォッカのスパゲッティ』(スター出版)。小説には映画『音楽人』の原作となった『音楽人1988』など。
エッセイは『一流の女が私だけに教えてくれたこと』(マガジンハウス)など多数。
http://moriaya.jp
https://www.facebook.com/aya.mori1

撮影 萩庭桂太
1966年東京都生まれ。
広告、雑誌のカバーを中心にポートレートを得意とする。
写真集に浜崎あゆみの『URA AYU』(ワニブックス)、北乃きい『Free』(講談社)など。
公式ホームページ
https://keitahaginiwa.com

ヘアメイク・草場妙子
https://kusabataeko.com/


2024.4.12 written by 森綾
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