50代は楽しくもあり、まだまだ踏ん張りどころの多い時期。川村さんは心身ともにその変化を感じています。
「自分の身体も築50年の建物だと思えば当然、どっか傷んでいますよ(笑)。身体がしんどくて諦めたということは今までなかったけれど、今はしんどいなあと思うこともあります。病弱だった父親がよく『無理がきかない』と言っていたけれど、こういう意味なのかなあと思ったり」
それでも、心の奥底からは、今の年齢だからこそ、かえって湧き上がってくる歌があります。
「もちろん、若い人のための歌も書いていきますが、自分でうたう歌に関しては同年代だったり、ちょっと上の年代の人たちのための上質な大人の音楽をやっていきたいと思っています。遠い昔を懐かしむような歌があってもいいし、現在進行形の男女の歌があってもいい。若い頃に思いを馳せて聴くだけではなくて、今の歌を、ね」
若い頃に作った歌も、また今は違う思いで歌えそうだと、川村さんは感じています。
「若い頃に作った歌は、忠実に描きすぎて、自分が歌おうとすると共感できなかったり、恥ずかしかったりしたことがありました。でも、そこにもしも普遍性のあるものがあれば、今はむしろ客観的に表現できるのではないかと思うのです」
ここまで生きてきたからこそ、生活のなかで当たり前だと思っていた一瞬も、輝いて見える。しっかりと味わえる。川村さんの歌う大人の歌は、まるで香りのように、心の奥への旅に誘ってくれるのです。
2017.11.8リリース 川村結花 NEW ALBUM「ハレルヤ」
取材・文 森 綾
フレグラボ編集長。雑誌、新聞、webと媒体を問わず、またインタビュー歴2200人以上、コラム、エッセイ、小説とジャンルを問わずに書く。
近刊は短編小説集『白トリュフとウォッカのスパゲッティ』(スター出版)。小説には映画『音楽人』の原作となった『音楽人1988』など。
エッセイは『一流の女が私だけに教えてくれたこと』(マガジンハウス)など多数。
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撮影 ヒダキトモコ
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