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    第210回:春野恵子さん(浪曲師)

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《2》香り付きのトイレットペーパーに癒された”恵子先生”

 『電波少年』でキャスティングされた企画は、坂本ちゃんという芸人を東大に合格させるべく、住み込みで家庭教師をするという内容だったのです。当時、30%という視聴率を叩き出す人気番組でしたが。

「四谷のマンションに監禁状態です。太陽も見ない、財布からお金を出すこともない。ケータイも持っちゃダメ。まるで刑務所です。こっそり当時の彼氏にケータイで電話していたら『どっちかがケータイ持ってるだろ!』と取り上げられました。落ち込んでいたら、坂本ちゃんが、私のことを可哀想だと思ってくれて、入浴剤と香り付きのトイレットペーパーをおねだりしてくれました。優しいですよね。トイレットペーパーのいい香りを嗅いで、落ち着く〜と思いました。そのとき、生活の中に香りがあるって大事だなあと思ったんですよ」

 やがてその番組が終わり「恵子先生」という名前が一人歩きし始めます。

「なんの実力もないのに、ぽんと顔が売れてしまった。私はゆっくり時間をかけてやることをやりたかった。だから舞台に出たいと言っても、事務所は『お金にならない』という。何が好きなの?と聞かれて相撲と時代劇だというと『ワインとかヨガとか趣味を持ちなさい』みたいな。当時は事務所の意向が絶対の時代でしたから。苦手なクイズ番組にキャスティングされて、とうとう私は冬の北海道へ逃げたんです。網走まで行って一歩外へ出たら冷たすぎて死ぬ、と思いました」

 その後、お姉さまの住んでいるニューヨークへも逃げたそうです。

「ちょうど911の直後で、銀行勤めをしていた姉が心配だったというのもありました。姉が弁護士の友達とルームシェアしているところへ転がり込んで、2〜3週間いたかな。そこでニューヨークというのは、いろんな人がいて、自分は自分で生きている。『私はこれをしている人です』と言えないと、この街を本当には楽しめないな、と思ったんです。それで、まず日本で自分をちゃんとつくろうと思って戻ってきました」。

春野恵子さん

《3》最初は落語に語り芸の面白さをみた

 そこから、いろんなところに散らばったパズルを一つずつ埋めていくように浪曲に辿り着いて行った恵子さん。
 落語を観に行ったことも、そのパズルの一つのピースでした。

「『電波少年』が終わった直後に、春風亭昇太さんのラジオで、インタビューしてもらったんです。それがきっかけで昇太さんと花緑さんの会を観に行きました。そこで、1人で語っているのに、それを聴いている方は無限大の想像ができる、語り芸の面白さに夢中になりました。自由で制限がない。そして、私が目標としている『長い時間をかけてやるもの』だったんです」

 恵子さんには、落語の「師匠と弟子」という関係も好もしいものに映ったようです。

「今時のメンター、みたいな感じじゃないですか。リスペクトできる人がいて、いいじゃないですか。私は若干、M気質でもあるので、それもいいなと」

 女性がやるなら落語より講談かもと、木馬亭に行ってみた恵子さん。

「定席があって、浪曲の合間に一人講談が入ると。それを目当てに行ってました。神田松鯉(しょうり)先生がかっこよかった。ところが私が一番はまってしまったのが、浪曲だったんです!」

 なぜ浪曲だったのか。それは、そこに至る全てのパズルのピースが、浪曲に揃っていたからです。

「私は芝居が好きな母、ジャズやハリウッド映画が好きな父、相撲や時代劇が好きな祖父という環境で育ちました。私自身、そのなかで時代劇とミュージカルが一番好きになっていた。ところが浪曲には時代劇とミュージカルが両方あったんです」

 そのとき、立川談春に相談すると、談春さんは「小屋を借りて自分でやりゃいいんだよ」とおっしゃったそう。

「でも私はバックボーンがいるな、と思ったんです」

 時間をかけて、自分をつくりたい。そこで、恵子さんは一番感動した浪曲師・国本武春さんの三味線教室に飛び込みます。

「浪曲師になりたい、と言ったら『いやいやいや、、、食べていけるかどうかわからないからやめておいたほうが』と言われました。そう言いながらも、その後、武春先生は素晴らしい音源を送ってくださったんです。そのなかに、二代目春野百合子さんの『おさん茂平』が入っていたんです。談志師匠も『浪曲を聴くなら春野百合子だね』とおっしゃっていた人でした。それで春野先生が国立文楽劇場に出ていらっしゃるときに挨拶に行きました。それが2003年のことでした」。

春野恵子さん

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