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    第210回:春野恵子さん(浪曲師)

《4》浪曲師になった時はゼロスタートだった。50歳の今、再びのゼロスタート。

 恵子さんは、春野百合子師匠の元へ何度か通い「やってみなさい」と言われて『おさん茂兵衛』を一節うなりました。

「声調べ、という試験のようなものですね。見込みがあったのか、それから都内から大阪へ夜行バスで通いました。浪曲師になったとき、それまでの世界を捨て、携帯のアドレスも全部消して、3ミリの髪の坊主頭にして、ゼロスタートで。『恵子は頭がおかしくなって大阪に行ったらしい』と言われていたようです」

 師匠のもとで10年修行した後は、ようやく自らの今までの人生と浪曲の融合が始まって行ったようです。

「ロック浪曲や、英語浪曲、今時の女子の生態を浪曲にしたり」

 2014年にはクラウドファンディングで550万円集め、浪曲師・春野恵子としてニューヨークへ。

「ベルリン、中国、ロシアのモスクワ音楽院、イタリア、ブラジル、アイルランドと浪曲公演に行きました。コロナ前、いや円安前に行っておいてよかった(笑)」

 怒涛の人生は今ようやく落ち着いているところ。昨年、20年ぶりに大阪を離れ、息子さんと関東に戻ってきました。

「でもまだ毎週、大阪と名古屋へは仕事に行っています。ただ東京では浦島太郎のようで、誰も私のことを知らないし、50歳でまたゼロスタートですよ。浪曲師としては古典を残すことと、新たな挑戦をすることを続けていきたいですね。春野家の浪曲というバトンを次の世代に渡すのは使命ですから。私はもはや細胞レベルで浪曲師です。だからこそ、狭い世界なので、いろんなことを吸収したい。どこへどう広がろうかと思っているところです。とりあえず、少しはゆっくりしつつ」

 ゆっくりしましょう、と連呼して帰って行った恵子さんですが、はて。才能とエネルギーに満ち溢れた彼女を、世間はなかなかゆっくりさせてはくれないかもしれません。
 インタビュー中に『おさん茂平』のロック浪曲に登場する『ヘイジュード』を一節うなってくれましたが、一瞬にして舞台になりました。
 確かに浪曲には、彼女の欲したすべてがあるのです。

春野恵子さん

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取材・文 森 綾
フレグラボ編集長。雑誌、新聞、webと媒体を問わず、またインタビュー歴2200人以上、コラム、エッセイ、小説とジャンルを問わずに書く。
近刊は短編小説集『白トリュフとウォッカのスパゲッティ』(スター出版)。小説には映画『音楽人』の原作となった『音楽人1988』など。
エッセイは『一流の女が私だけに教えてくれたこと』(マガジンハウス)など多数。
http://moriaya.jp
https://www.facebook.com/aya.mori1

撮影 萩庭桂太
1966年東京都生まれ。
広告、雑誌のカバーを中心にポートレートを得意とする。
写真集に浜崎あゆみの『URA AYU』(ワニブックス)、北乃きい『Free』(講談社)など。
公式ホームページ
https://keitahaginiwa.com


2024.7.3 written by 森綾
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