デビューした頃は20歳。ガールポップと呼ばれた女性アーティストたちには優秀なシンガーソングライターがたくさんいましたが、一方ではアイドルのように見ていたファンもいたのかもしれません。
「26歳で結婚して、28歳で出産したのですが、そのあたりでファンの方も変わっていったかもしれません。どちらかというと女性のファンや家族で応援してくださる方が増えました。私の人生を丸ごと応援してくださる方々が増えていったんです。同時に音楽も恋愛の曲だけではなく、家族や人生、平和といったテーマが自然と増えていきました」
プラネタリウムのコンサートでも披露された『祈り灯』は、母が息子を想いながら平和を祈る歌。彼女が詞も曲も書いています。
「長野の善光寺の奉納コンサートで、平和をテーマに曲を書いてもらえますかと依頼をいただいて書いた曲です。息子はまだ小学校低学年だったと思うのですが、プロモーションビデオを撮るとき、一緒に善光寺へ行きました。2月に善光寺で灯明まつりというお祭りがあるんです。その極寒の長野で、スタッフがいないので、小さな息子が震えながら照明をもってくれて。いまだに『あのとき、めちゃくちゃ寒かったな』と言ってます。でもすごく楽しかったみたいで、大人に混じって、僕もこの作品をつくったんだという自意識があったようです」
まだ小さい息子さんが寒い中、照明をじっともっていたというのは、いじらしい話です。
「お母さんはこういう仕事で、寒いところでも歌うんだというような、そういうこともわかってくれたでしょうし。何回もプレビューで聴くので曲を憶えてしまったらしく、いまだにカラオケでも歌ってくれます。息子に向けて書いた曲であり、未来の子どもたちすべてに向けての想いなので。まずは息子に届いたようで嬉しかったですね」
『祈り灯』は、平和が脅かされる今の世の中に、ますます届いてほしい曲。節目の25年にもぴったりな大きなテーマです。
今年6月には生まれ故郷の秋田の大きなホールでもコンサートを開催。11月は浜松、名古屋、12月7日には奈良でもコンサートがあります。
「私は秋田県人なんですが、奈良が好きすぎて、奈良県人会に入れてもらっているんです」
それはほほえましい異例さ。なぜそんなに奈良が好きになったのかも、ラジオの旅番組がきっかけでした。
「取材で天川村に行って、本当に感動して。その近くに明日香村もあり、飛鳥寺のご住職とも仲良くしてもらって。それから毎年のように行ってるんです。たまたま先輩ミュージシャンで奈良出身の平井景さんが、私が奈良好きなのを知らずに『曲を作ったので奈良県人会で歌ってくれませんか』と依頼してくださって。その時に『私は奈良県人じゃないけどいいんですか』と聞いたら『奈良が好きなら入れます』と言われまして。だから、奈良県人会と秋田県人会のどちらにも入っているんです」
そんなご縁があり、コンサート開催の運びになったそうです。
25周年は来年の6月まで続きます。
「いろんな場所でできたらいいですね。長野での公演も決定していますが、ぜひホームページでチェックしてくださいね」
コンサートの前には、テンションを上げるために香りを使うという松本さん。
「香水ではなく、ボディクリームを塗るようにしています。ふわっと香るのが好きなんです。香りってすごいですよ。香ったときに、一瞬にしてテンションも変えてくれるし、ハッピーにもしてくれます。いろいろ疲れていたりすると、ビタミンが不足しているというより、香りが不足しているということが結構あるんです」
そのくらい、松本さんと香りは切っても切れない関係のようです。
「落ち込んだり疲れたりした顔をしていると、友達にも家族にも『香りをちゃんと取り入れたほうがいいよ』って言われるんです。いつもお願いしているエスティシャンの人にも言われたことがあります。『英子さん、今、香りが足りない』って」
リラックスとして使うだけではなく、香りは気持ちを立て直すためにも有用なのかもしれません。
「ライブのときって、緊張していますし、ナーバスな状態で皆さんを誘っていかなければならない立場じゃないですか。自分が自分の緊張に負けるわけにはいかないし、みんなを率いていく空気作りというか。一つの世界をつくるために、香りは必要なんです。コンサート会場の入り口で、柑橘系のアロマをたいたこともありました。アロマ空間デザイナーの石井保子さんとコラボした香りで、同じ香りのアロマミストも販売しました。このコンサートの世界、空気感を香りの思い出と一緒に持ち帰ってもらおうということで。またそんなことができたらいいな」。