10周年までの数年間のバースデーライブは、渋谷プレジャープレジャーを満席にし続けていた227。
有名ミュージシャンのサポートにも引く手あまたの二人ですから、その際のコラボレーションんも実に豊かで楽しくなります。
「特に私たちはボーカルがいないインストゥルメンタルですから、だからこそのコラボレーションの自由さもあるんですよね。タップダンスなどのダンサーを入れたり。小野正利さん、庄野真代さんが歌ってくださったり。道尾秀介さんが書き下ろしをしてくださって、それを俳優の中嶋朋子さんが読んでくださったということもありました。一度、ゲストを呼び過ぎて翌年どうしようということもありましたが(笑)」(Tama)
しかしなんと言っても忘れられないのは、2020年のコロナ禍でのことでした。
「前日の2月26日に『ライブ禁止』が発表されたんです。あの時のことは一生忘れませんね。でも翌日ですからね。押し切っちゃおうと。でもSNSに『開催します』とは書けないから、当日の花を載せて『たくさんにありがとうございます』なんて書いて」(Tama)
席数を制限しながらも、コンサートの開催をやめなかったことは、彼女たちが何よりも「継続」を大事にしてきたからでしょう。
「本当、継続は力なり、ですよね。でも楽しく続けてきているから、それが大事かな」(Tama)
今回は13回目。なんと東京渋谷、セルリアンタワー・能楽堂が舞台です。
誰でもが出られるわけではない能舞台。これにはYukiさんの功績がありました。
「私が若い頃に大変お世話になった、五世野村万之丞さん(八世野村万蔵)という方がいらしゃったんです。悲しいことに2004年に、44歳という若さでお亡くなりになってしまったのですが。私は20代のときに、故五世万之丞さんの作品で、打楽器パートのトラのトラ(大先輩の代打の代打)という形で、五世万之丞さんの作品に初めて関わりました。その後も何作品か、出演させていただける機会がありまして、五世万之丞さんからは本当にたくさんのことを学ばせていただいたんです。先生がお亡くなりになった後も、五世万之丞さんの作品に出演させていただくことがあったので、事務所のACT.JTの方や五世万之丞さんの弟様である、九世野村万蔵さんにも227のステージを見ていただく機会に恵まれました」(Yuki)
人と丁寧に付き合うことのできる二人だからこそ、こういうやんごとなき方々とのご縁も続いてきたのでしょう。
「今回、まず能楽堂でやらせてもらうという話を、最初に私が直接、セルリアンタワーの能楽堂に電話しちゃったんですね。『不審な電話が』みたいに思われたのを、ACT.JTの方が『あの人たちは何度か出入りしていますから大丈夫です』と言ってくださいました。その後,ACT.JTが、今回のライブを制作協力という形で助けてくださることになり、今回のゲストの相談にまでのってくださったのです」(Yuki)
その結果、なんと六世野村万之丞さんが、ゲストに来てくださることになったというのです。
「六世万之丞さんは、お世話になった五世万之丞さんの甥にあたられる方。チェロの宮田大さんともコラボされていたりして、若い世代からも注目を集めていて、その方にゲストに来ていただけることになり、すでに感動しております。その上、ACT.JTの衣装までお借りすることになりました。これが素晴らしいものなんです。貴重な衣装を着させてもらえるなんて。お金では買えないものすごい価値をいただいているなと感謝でいっぱいです」(Tama)
すでにSS席は売り切れだとか。この日にしか見ることができない貴重な衣装、そして決まり事である白足袋姿で奏でる二人の音楽はまた異世界を見せてくれそうです。
毎年のバースデーにはプレゼントを贈り合うというのも、仲の良い二人ならでは。TamaさんはいつもYukiさんに香りのものをプレゼントするのだそうです。
「毎年、一番大きなライブを2月27日に設定しているので、その前って、カリカリしているんですよ」(Tama)
「それで、Tamaちゃんが、あれがいいよ、これがいいよ、って、早めに香りを選んでくれるんです。それをスタジオにまきまくって、リハーサルをするんですよ。もともと香りが大好きなんですが、Tamaちゃんはアロマ検定を持っていて詳しいですから。いつもリラックスするようなものを選んでくれるんです」(Yuki)
ピロースプレーや、こめかみや手首に塗るロールタイプのものなど。楽器を触るので、ハンドクリームは塗れないのだとか。
「飛行機乗るのにドキドキする時はこれがいい、とかね」(Yuki)
「リラクゼーションのブレンドには、サンタルウッドが入っているかな」(Tama)
Yukiさんは、火をつけてたくお香も好きで、朝晩、たいているのだそう。
「京都の三十三間堂に行ったとき、そこの香りがすごく好きで、お香を3つも買いだめしてしまったほどです!(笑)」(Yuki)
笑顔で演奏し、聴いている人たちも笑顔になる。そんなサウンドをつくりあげてきた227の13年は、もちろん大変なこともいろいろあったはず。それでも「楽しく続ける」ことの隙間には相手を思いやる、やさしい香りが漂っているのでしょう。
取材・文 森 綾
フレグラボ編集長。雑誌、新聞、webと媒体を問わず、またインタビュー歴2200人以上、コラム、エッセイ、小説とジャンルを問わずに書く。
近刊は短編小説集『白トリュフとウォッカのスパゲッティ』(スター出版)。小説には映画『音楽人』の原作となった『音楽人1988』など。
エッセイは『一流の女が私だけに教えてくれたこと』(マガジンハウス)など多数。
http://moriaya.jp
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撮影 萩庭桂太
1966年東京都生まれ。
広告、雑誌のカバーを中心にポートレートを得意とする。
写真集に浜崎あゆみの『URA AYU』(ワニブックス)、北乃きい『Free』(講談社)など。
公式ホームページ
https://keitahaginiwa.com