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    第253回:渡辺満里奈さん(タレント)

《4》夫の心の不調は一番近くで見ている私が治そうと思った

 自分に向き合う気持ちを大事にするだけではない。渡辺さんは家族のこともとても大切にしている。

「まず、母には感謝しています。ものすごくサポートしてくれて、子どもたちが小さいときから、私が仕事をできるように面倒をみてくれました。いつでもどんなときでも、断られたことがなかったので、それは本当にありがたいです」

 受けた愛情は、また愛情を与える力になる。渡辺さんは結婚20年になる夫の名倉潤さんが心の不調に陥ったときも、全身全霊で寄り添った。

「最初は何も分からなくて、すごく不安だったんですが、一番近くでみているのは私だから、私が治す、って思ったんですよ。お医者さんでもないのに。治すというのは、サポートするということなんですけどね」

 人一倍、研究熱心な渡辺さんのことだ。本を読んだり、調べたり。

「でも結局、一番の薬は、周りが理解することだとわかりました。いつも仕事してくださるスタッフの方々、共演者の方々の理解があったから、安心して過ごせたのではないかと思っています。今は本当によくこんなに元気になったね、というくらい元気です」

 おそらく、渡辺さんはがんばりを見せないようにがんばったのではないかと想像する。
『不機嫌ばかりな私たち』には、ご飯をつくるのが嫌なわけじゃなく、疲れるときがあるという話が出てくる。

「なんで毎日毎日、メニューを考えなきゃいけないのかとか、また同じものって思われるかなとか。どんどん自分を追い詰めてしまう。でも究極、やらなくてもいいんですよ。別にやれって強制されているわけではない。出前でもいいし、買ってきたものでもいいし。コロナ以降、夫がつくったり、食べたものは自分で洗おうということになって。みんなで分担すれば、誰かに大きく負担がのしかかることはない。チームとして役割をもっていく。でもね、だんだん子どもたちも大きくなって、巣立っていきますし。自立させる、一人で生きていく力を身につけさせるのが、今の私の役割かな」

 『不機嫌ばかりな私たち』は、不機嫌なエピソードだけではなく、それをどう解消したか、どう考え直したかというところまでが書かれている。だからとても読後感が爽やかなのだ。

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《5》ダウンサイジングして身軽になりたい

 60代に向け、これからの人生をどう生きるか。そこにも渡辺さんはもう目を向けている。

「ダウンサイジングしていきたいですね。なるべく小さくしていって、身軽になりたい。身体もそうだけれど、モノも一緒で。手放して、身軽になりたいですね。一部屋ずつ、やっているところです。下の子が、順当にいけばあと7年ぐらいで社会人になるので、その間に準備を。そうしたら、夫婦二人になりますから、そこからまた新しいフェーズだなと」

 夫の名倉さんにはその段階での夢があるそう。

「夫はメジャーリーグをやっているシーズン中、アメリカにいるという夢をもっているんですけど、その夢を叶えるには、もうちょっと働こうみたいな。その夢のために今何をするか。逆から考えるんですよね」

 渡辺さん自身も、まだまだ発信していきたいと考えている。

「今回、本を書いて、自分と向き合っていく作業だったし、個人的には最高のセラピーであり、デトックスでもあったんですね。なるべく正直に、飾ることなく言葉にする。それで、この本を読んでくださった人たちが『なんだ、自分だけじゃなかったんだ』って思ってもらえたり、肩の力をふっと抜いてもらえたら、すごく嬉しいなと思っていて。私が発信することで、そう思ってくださるのなら、同世代の人たちに向けて、発信していきたい。それと同時に、若い人を応援したいなと思っています。私自身が若い頃に周りの人たちに守られて楽しくやってこれたので。それを返したいなという思いがあるんです。具体的に考えていきたいと思っています」

 今回のエッセイにはとても素敵な言葉が詰まっているけれど、こんな文章が目を引いた。

「これまで歩いてきた道で見てきたこと、家族や大切な人たちと過ごした大切な時間は、私の中に何層にも降り積もり重なって、忘れたことや忘れてないことも全部含めて、すべてが私自身を作ってくれている…」

 これは芸能人じゃなくても、どんな生き方をしてきても、誰にも当てはまることなのではないか。渡辺満里奈さんという人はこれからもそんなふうに、たくさんの人がうなづける発信をしていくに違いない。

渡辺満里奈さん

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取材・文 森 綾
フレグラボ編集長。雑誌、新聞、webと媒体を問わず、またインタビュー歴2200人以上、コラム、エッセイ、小説とジャンルを問わずに書く。
近刊は短編小説集『白トリュフとウォッカのスパゲッティ』(スター出版)。小説には映画『音楽人』の原作となった『音楽人1988』など。
エッセイは『一流の女が私だけに教えてくれたこと』(マガジンハウス)など多数。
http://moriaya.jp
https://www.facebook.com/aya.mori1

撮影 萩庭桂太
1966年東京都生まれ。
広告、雑誌のカバーを中心にポートレートを得意とする。
写真集に浜崎あゆみの『URA AYU』(ワニブックス)、北乃きい『Free』(講談社)など。
公式ホームページ
https://keitahaginiwa.com


2025.5.29 written by 森綾
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