今、好楽さんには14人の弟子がいます。
「ハードルが低いから、噺家連中には『駆け込み寺』って呼ばれてますよ(笑)」
漫才コンビ・ナポレオンズのボナ植木さんのご子息も三遊亭好の助として2018年に真打ちに昇進。もともと笑福亭鶴瓶さんの弟子だったはち好さんも、門下です。
「鶴瓶と飯を食ってたときにはち好も呼んだら、鶴瓶が『ええとこの弟子になったな』、って。なすりつけたくせに(笑)」
常に大勢を率いて、ムードを明るくするのが好楽さんの身上なのでしょう。
『笑点』の楽屋でもその存在感は際立っているようす。
「だいたい本当らしい嘘とかくだらないことを言ってるんですけどね。まあね、さんざん怒られてきたからさ、しょんぼりしてる人がいたりしたら見てられないんだよね」
そんな好楽さんにとって、落語とは、と尋ねると、膝を打つ言葉がかえってきました。
「天職だね」。
ご自宅は、日暮里にあるそう。こちらは神社ではなく、お寺のそば。
「線香の匂いっていうのはね、落ち着くんですよ。うちにはちゃんと神棚と仏壇があって、夫婦揃ってチーンとならして拝むのが好きです。寺のそばなんて墓が見えるから嫌だなんて若い人は言う人もいるけど、なーに、みんな最後は墓に入るんだからね。私はおじいちゃん、おばあちゃんが歩いてるのを見ると、いいなあと思います。タワーマンションっていうのが最近はたくさん建ってるけど、うちは普通のマンションですよ。高いところから見下ろすのは嫌だね。そうだな、100階建てのタワーマンションの、1階に住みたいな(笑)」。
常に周りを笑わせながら、ちょっと照れながら。古き良き本物の噺家のやさしい笑顔が、心に残りました。
取材・文 森 綾
フレグラボ編集長。雑誌、新聞、webと媒体を問わず、またインタビュー歴2200人以上、コラム、エッセイ、小説とジャンルを問わずに書く。
近刊は短編小説集『白トリュフとウォッカのスパゲッティ』(スター出版)。小説には映画『音楽人』の原作となった『音楽人1988』など。
エッセイは『一流の女が私だけに教えてくれたこと』(マガジンハウス)など多数。
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撮影 山口宏之