鉄道とお酒が好き。そんな六角さんにぴったりの番組がやってきたのも、強運のひとつかもしれません。いや、思いがその仕事を引き寄せたのかも。
コロナ禍でロケ撮影を休止していたNHK—BSプレミアムの『六角精児の呑み鉄本線・日本旅』(随時放送)も、そろそろ再開予定。待ち遠しく思うファンがたくさんです。
「これから先、失くなってしまう路線もたくさんあるでしょうが、残す理由がなかなか難しい。鉄道好きとしては、乗りに行って少しでも貢献するしかない。老齢化で人口が減って鉄道というもの自体が斜陽産業で。どうやって持ち直すのか、大きな問題です。そんななかで、いろんな災害を経て頑張っている三陸鉄道の話を聞くと、自然と応援にも力が入ります」
車窓として好きなのは「北海道」。
「北海道はすべて好きですね。和歌山あたりもいい。行きづらいところ、というのが魅力になる。たとえば熊野神社なんてそうだけれど、険しいところを通って、神様にやっと会えるわけですよね。サンクチュアリっていうのは、そういうものなんでしょうね。手つかずの場所が面白いです」
旅を心底楽しめる六角さん、好きな土地も、あまり人が集まらないところのよう。番組の再開も間もなく。
「茨城か栃木にいく予定です。でもロングシートで酒飲むのはどうかな。アル中みたいでしょ(笑)」
確かに、車窓と顔は直角であってほしい気がします。車窓に映る六角さんがまた素敵なのです。
旅が似合う人は音楽も似合います。もともと、高校時代も先に音楽をやっていた六角さん。「六角精児バンド」は、今や九州などにもツアーに出かける、知る人ぞ知る人気バンド。もともとは劇団のイベントでやってみたのが、今のバンドのもとになりました。
「33~34歳のときに、劇団のイベントで、おやじバンドを結成したのです。それが少しずつ続いて、ライブが少しずつ増えていった。じゃ、アルバム作ってみようか、と。そうしたら『呑み鉄本線・日本旅』のなかで、曲を流してくださったので、2枚目も作ろうか、というような流れで。無理しないようにやっています」
コロナ前のツアーでは、福岡、鹿児島、大分という九州ツアーや、関西、去年は北海道にも行ったとか。
「音楽は好きですね。聴くのも好きだけど、バンドで合わせていい感じになる瞬間が掛け値なしに楽しい。芝居は台本があって、それをお客さんに伝える自分の役目というものがあります。役者にとって台本というのは導きでもあり、制約でもある。楽しむまではなかなか時間がかかります。苦労の先にある、若干の達成感という感じ。音楽はただただ楽しい。ただ、生きる糧にするには難しいから、ちょっとずつ、ちょっとずつ」
音楽の話になった六角さんの顔はとても楽しげに、柔らかい表情になりました。