なんといっても六角さんの本拠地は舞台。12月には扉座で朗読劇に出演することも決まっています。
「何の演目をやるかは決まっていないのですが。全然やったことのないものかもしれないし。ただ、以前、舞台でやったことのある演目だと、すごく新しい発見がありそうな気もしています」
一見、やる気を全面に表現しない六角さんですが、すべてのことを深く見つめて自分のものにしている人なのではないでしょうか。
そんな六角さんに好きな香りはと尋ねると、面白い答えが返ってきました。
「うなぎを焼く香りですね。成田山新勝寺の参道が、鰻ストリートになっているんですよ。もちろん、お寺からはお香の香りが漂いますよね。でもそこで鰻を焼く香りが立ち上ってぶつかるんです。成田山の神様対人の欲望! 聖なるものと金銭欲や食欲が混じり合ってですね、不思議な坩堝となるんです」
時々、鰻の香りを思い出すような笑顔が。混沌とした状況に人の裏腹な心を見つける、なんとも六角さんらしい捉え方です。
役者として、ひとりの人間として。六角精児さんの生き方は今、とても魅力的です。
「結局、人に求められることに、自分のなかにあるもので精一杯、応えていくしかないですよね。無理なくやって、そこにある、パフォーマンスを見てもらえたらいいかな」
人生のモットーは、と最後に尋ねると。
「許す、忘れる」
とても力強く返ってきました。
劇団扉座オフィシャルサイト
https://tobiraza.co.jp/
取材・文 森 綾
フレグラボ編集長。雑誌、新聞、webと媒体を問わず、またインタビュー歴2200人以上、コラム、エッセイ、小説とジャンルを問わずに書く。
近刊は短編小説集『白トリュフとウォッカのスパゲッティ』(スター出版)。小説には映画『音楽人』の原作となった『音楽人1988』など。
エッセイは『一流の女が私だけに教えてくれたこと』(マガジンハウス)など多数。
http://moriaya.jp
https://www.facebook.com/aya.mori1
撮影 初沢亜利(はつざわ・あり)
1973年フランス・パリ生まれ。上智大学文学部社会学科卒。第13期写真ワークショップ・コルプス修了。イイノ広尾スタジオを経て写真家として活動を始める。
東川賞新人作家賞受賞、日本写真協会新人賞受賞、さがみはら賞新人奨励賞受賞。写真集に『Baghdad2003』(碧天舎)、『隣人。38度線の北』『隣人、それから。38度線の北』(徳間書店)、『True Feelings』(三栄書房)、『沖縄のことを教えてください』(赤々舎)。
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