また一般家庭でも、そういったスタイリッシュなお仏壇に合わせ、これまでとは違ったお線香が好まれていると言います。
「お線香は香煙を通じ、故人と今生きる私たちとの心をつなぐものです。だから、亡くなった方の好きな香りをと考える方もいるし、生きている自分が好きな香りがいいと思う方もいる。どちらもあってよいのだと思います」
そこで開発されたのが『薫り合わせ』というシリーズ。
「お茶の香りのお線香には、伊藤園様に依頼して特別な香り高いお茶のエッセンスを配合しています。またコーヒーのお線香はエスプレッソの香りを配合してもらいました。パッケージに描かれた二つのティーカップは、故人との語らいをイメージしています。」
身近な香りのお線香は、日常のなかで、アロマのようにも使えそうです。
「私は自宅でカレーの匂いなどをマスキングをするためにも使っています。お香よりも香りのやさしいシリーズなのでおすすめですよ。来客の際は玄関でたいたりもします。」
橘さんの営業先には、葬儀社もあります。最近は「終活」イベントを開催する葬儀社も増えました。
「同じ仏教でも宗派によって使うお線香が違うといったこともあるでしょうし、弔い方、別れ方のいろいろを実際に見ておきたいと考える方は増えています。
棺の入棺体験などというのもあったり。遺影を撮れるコーナーも人気ですね。
そういった場所では我々は香り袋を作るワークショップを開催したりしています。
まずは香りに親しんでいただくことも大切かと思うのです。」
家族葬が増えていることから葬儀の単価は下がっていますが、2040年には死亡人口はピークになるとか。
お線香の良さをどんなふうに伝えていくか。橘さんは常にこんなことを考えています。
「ご供養と同時に、大切な人を亡くして気持ちが沈んでいるのを慰めるというのがお線香の大きな目的のひとつでもあります。その慰めの気持ちの大切さを伝えていきたいですね」
商品を売るということだけではなく、気持ち、習慣を伝えていく。橘さんの仕事の意味は深いのです。
◆おすすめ商品
橘さんが日常に使っているもう一つの便利な商品が、このアウトドアスプレー。
「6歳の息子が公園で遊ぶときなどにも使っています。軽い虫除けになりますし、保湿成分が入っていて肌もしっとりするので、私も愛用しています。」
取材・文 森 綾
https://moriaya.jimdo.com/
大阪府生まれ。神戸女学院大学卒業。
スポニチ大阪文化部記者、FM802編成部を経てライターに。92年以来、音楽誌、女性誌、新聞、ウエブなど幅広く著述、著名人のべ2000人以上のインタビュー歴をもつ。
著書などはこちら。
撮影 ヒダキトモコ
https://hidaki.weebly.com/