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竹と光のページェント、新潟・国際田上竹祭 たがみバンブーブー2025
    1. コラム
  • 竹林に抜ける風の初秋の香り。
    竹と光のページェント、新潟・国際田上竹祭 たがみバンブーブー2025へ。

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 新潟・羽生田。長岡から在来線で40分ほど。越後平野を見下ろす丘にある小さな湯田上温泉の街を竹と光に彩るイベント「たがみバンブーブー2025」が今年も9月13日から10月13日まで1ヶ月にわたって開催されています。竹という地域の資源をアートの力で再価値化し、新たな魅力で地域を元気にするのが目的ですが、ふらりと訪れてもその美しさに息をのみます。4度目となる今年の催しは、CHIKAKENによる竹あかり、高橋匡太によるインスタレーション・アート、ロープワークアーティスト、はんすによる国内最大級の作品など見どころもたくさん。行燈を手に秋の夜長の散歩と温泉を楽しみに出かけてみませんか。

竹と光のページェント、新潟・国際田上竹祭 たがみバンブーブー2025

行燈を手に竹林へ。何もないからこそ、新しいアートなイメージを

 東北新幹線・長岡駅から在来線の信越本線に乗り、田園風景を見ながら40分ほど。羽生田駅と田上駅にまたがる田上町で、竹と光のページェント、たがみバンブーブーが開催されています。
 実行委員の馬場さんは言います。

「町の半分が里山と竹林で、特産品は、たけのこ。僕たちは学校帰りに当たり前のようにたけのこを掘っていましたね。でも新潟県民を対象としたweb調査では50%もの人が田上町を知らなかったし、70%もの人が『特産品も何もない』と回答したんです。でも僕たちは『何もない』という言葉をポジティブに捉えて、新しいイメージをつくることができると思いました」

 当たり前にある竹を、感動できるほど美しいものに変える。
 こうしてプロジェクトがスタートしたのは、2022年。

「2022年の第1回目から人口1万人の町に2万人の来場者が訪れました。翌年は有料化し、2万8000人に。昨年は4万人も来てもらえました」

 今年はさらに会場のアートも充実し、昨年以上の来場を見込んでいます。

 まずは羽生田駅で下車し、駅前の無料会場を見つつ、有料のメイン会場、たがみバンブーブー竹林へ。
 日暮れから夜にかけて。秋の日は釣瓶落とし、一瞬に暗くなります。ネオンも高層ビルもない本当の日没は、都会の人たちにとっては贅沢と思えるほどです。

 メイン会場の竹林は、オンラインでチケットを入手すれば平日1000円、休日も1200円。当日購入でも平日1500円、休日1700円。そしてなんと、名前に竹がつく方は証明書を見せれば無料だそうです。

竹と光のページェント、新潟・国際田上竹祭 たがみバンブーブー2025

幻想的な竹と光のアート。立ちすくんで見ていたくなる光景

 メイン会場の竹林には、思いもかけない素晴らしいアートがいくつもありました。
 まず驚いたのは、4本の竹に廃棄されるはずの白い繊維を巻きつけ、光を当てたアート作品。
 これは高橋匡太さんの作品で、幻想的にふんわりと色が変わっていきます。

「高い場所は、もちろん職人さんが繊維を巻き付けましたが、低い場所は、地元の小学生に手伝ってもらいました」

 高橋さんは嬉しそうに語ってくださいました。それは子どもたちにとって、忘れられない思い出になったことでしょう。そうして自分たちが作品づくりに関わったという経験は、本物のアートに興味をもつきっかけにもなったはずです。
 この町で、そんな体験が貴重な理由は、こんなところにもありました。
 地元に生まれ育った馬場さんは言います。

「この町には中学校までしかなく、高校は電車に乗って新潟へ通うことになるんです。そうしてだんだん、地元から遠ざかってしまう。でも、自分たちが携わったこんなイベントがあれば、またこの時期に田上に戻ってこようと思うかもしれないでしょう」

 いつまでも立ちすくんで見ていたくなる光景。きっと、子どもたちも、またこの場所へ戻って来たいと思うに違いありません。

 光のアートはそこここに体感できるようになっています。
 たくさんの竹で囲まれた鏡がある空間。
 また、竹にプロジェクション・マッピングをした空間も。
 投影される映像はそこにいる人間にも映り、まさにその場へ溶け込むような没入感があります。

 ふと見上げると、ロープワークアーティスト、はんすによる大掛かりな網の道が。
 足の裏がやや痛くなりますが、子どもも大人も、その上を歩くことができます。
 光の竹林をアドベンチャーするような感覚も新しいのです。

竹と光のページェント、新潟・国際田上竹祭 たがみバンブーブー2025

竹と光のページェント、新潟・国際田上竹祭 たがみバンブーブー2025

雨に濡れた竹の香りも芳しい

 メイン会場だけではありません。
 「たがみバンブーブー2025」は、もう一つ、有料会場があります。
 それは、田上の豪農、田巻家のお屋敷「椿寿荘」でのアート・ライトアップ。
 大正3年から3年半の歳月をかけて建てられた書院造りのお屋敷は、20メートルもある天然の吉野杉など、日本中の銘木を集めた寺院様式の大きな建物。通常は9時〜16時までの開館ですが、期間中は、夜間営業で、庭園を竹のアートとともにライトアップしています。CHIKAKENの竹あかり、三城賢士の演出によるものです。
 この日は雨に濡れた庭園を、広々とした縁側から眺めることができました。
 雨に混じり合う竹の香り。緑の香りが心を閑かさと落ち着きで満たしてくれます。
 ここにあった栄華のときと対話するような、尊い時間です。

竹と光のページェント、新潟・国際田上竹祭 たがみバンブーブー2025

無料でも楽しめるスペースがたくさん

 無料会場も見応えがあります。特に、フリースペースもお手洗いも綺麗な「道の駅たがみ」は必ず訪れたい場所。
 もちろん、光のアートも美しいですし、バンブーブランコや、日によってはバンブーナイトマーケットも開催。新潟県内の美味しいものを入手できます。
 駐車場も広く、昼間はもちろん「道の駅」ならではのお買い物も充実しています。

竹と光のページェント、新潟・国際田上竹祭 たがみバンブーブー2025

当たり前にそこにあるものが感動になる

 夜のアートを楽しむのですから、温泉宿に泊まるのもおすすめ。湯田上温泉で館内にバンブーアートが設置された4館は、ホテル小柳、末廣館、わか竹、初音。
 それぞれに歴史をもち、居心地の良さを追求した施設です。
 温泉の質はナトリウム泉、透き通っていて、肌あたりの優しいお湯です。
 特にホテル小柳は、今っぽいホテルの風情。露天風呂やサウナがついた最上階の浴場はもちろん、巨大なスピーカーでアナログ・レコードを楽しめるスペースや、季節の懐石料理も美味。
 もちろん新潟は米どころ、酒どころ。

 また、近隣には、全国でも珍しい大きな地蔵堂がある曹洞宗の定福寺など、訪れたい霊験あらたかなスポットもあります。
 「何もない」なんて嘘のようです。
 この「たがみバンブーブー2025」を体験したら、竹と聞いて、たけのこしか思い浮かべなくなることも、もうないでしょう。
 当たり前にそこにあるものを、感動に変える。
 そんなお手本を見せてもらった気がしました。
 竹の香りは、秋の風に似合い、心にしみます。

竹と光のページェント、新潟・国際田上竹祭 たがみバンブーブー2025


公式サイト
https://michinoeki-tagami.jp/?mode=f65


photo by Yumi Saito
http://www.yumisaitophoto.com/
Text by Aya Mori

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