小仲 当社の話になってしまいますが、数年に一度、パリのMCJP(日本文化会館)や当社のオフィスで香席をやらせていただいています。
今は月に一度、オンラインで配信させていただいているんですが、特にフランス人の方々は、すべてをポジティブに捉えていただけているというか。そのバックグラウンドを理解しながら、捉えていただける。あとは捉え方が分析的。どちらかというと、日本人は全体を通していい香り、という風になるんですが、フランスの方々は分析的で、複雑性のある香りを良いと捉えられているようです。
小泉 おっしゃる通りだと思います。ジャパナイズされている香りというのは、複雑性よりも嗅ぎやすさとか、フレッシュさや香りのまとまりというようなものを重視する。全体的に丸まって調和がとれているという意味合いを含んでいますね。でもグローバルでは複雑なものの方が圧倒的に評価されますし、もっと言うと、濁りがあるくらいの方が好まれることも多いです。
でも最近は、日本人が好きな香りは世界共通のいい香りだと認められてきているようです。日本人にとって「嗅ぎやすい香り」が、グローバルでも発売されることが多くなってきています。日本人の嗜好性自体も時代とともに変化してきていますね。
小仲 濁り、というのは、ちょっとしたひっかかりのようなものですか。例えばワインだったら、獣臭がするというような。
小泉 それに近いかな。あと、土っぽさだったり、暗さだったり、香りなのに喉の奥に何か引っかかるというような。
小仲 なるほど。
小泉 そういうものの方が、面白い、とか、パワーを感じるようなんですね。そのパワーを求める点が、日本人とは違いますね。
小仲 フランスでの香席で、さまざまな香料会社の調香師の方が20人くらい参加されたんですね。それで香りを当てる「源氏香」をやりましたら、1人しか当たらなくて。当たったのは30代くらいの調香師のアシスタントの方で(笑)。「これでステップアップになるでしょう」なんてみんなの前で笑顔で話されていましたが。アシスタントから調香師になるのも大変なんでしょうね。まずアシスタントになるのも大変なんでしょうし。その先に行くのは狭き門なんだろうなと実感しましたね。
小泉 私も何度か香道のお席に参加させてもらったことがありますが、難しかったです。フレグランスを評価するのとは全然違う感覚なんだなと思いました。
小仲 分析的になりすぎると微妙に香りが違ったりするので。ある程度全体感で捉える。もう一つ言うと、六国というのがあって、これは伽羅だなとか、置き換えるプロセスがあって。多少そういういった基礎知識の訓練があれば、割とどなたでも参加して楽しめるんです。逆に香りに詳しい方は分析的になるので、難しいのかもしれません。
小泉 ちょっとした違いを捉えて「これはさっきとは違うな」と思っても、同じ香木だったりするんです。
小仲 そうなんです。意外とまるっと捉える方が当たるんですよ。
小泉 その辺り、とても日本的で面白いですね。
小泉祐貴子さんプロフィール
https://scentscape.jp/about
サンキエムソンスジャポンのベーシック講座A開講。
https://www.cinquiemesens.jp/?pid=177923438
株式会社日本香堂ホールディングス
https://www.nipponkodo.co.jp/company/
構成・森綾(フレグラボ編集長)
撮影・萩庭桂太