小仲 中原さんはその後、ランドスケーププロダクツの仕事の一方で、若手のアーティストのスタートアップを支援できる場ともなった大規模な展示会『FOR STOCKIST』も開催されています。アメリカなどでは、そういう動きはあったのかもしれませんけど、かなり先駆けたことでしょう。
中原
あれは自分たちで、ホールセールというか、卸を始めようとしたときに、自分たちで体験しないとわからないと思って、いわゆる展示会に行ってみたんです。ビッグサイトや、アメリカの。そこで、結びつきはちょこちょこ生まれるんですが、自分たちが思ってる広がり方や人との出会い方とは違うと思って。何年か出てみて、自社で展示会を始めたんです。
最初から楽しくやりたかったので、職人を入れたり、バッグを作ってる人を入れたりして2〜3社で始めたんですが、翌年は8社、その翌年は16社と増えていきました。
当初の場所は表参道にあったヤマハのギャラリーを借りたのですが、最終的に50社になったときに、自由学園に移しました。
小仲 自由学園はフランク・ロイド・ライトの設計ですね。
中原 はい。モダニズムが生まれた学校でもあるので、そこで開催できるのもすごくありがたい話です。
小仲 出展者はどんなふうに広がっていったのですか。
中原
例えば、僕がある店の人の打ち合わせで鳥取へ行くとします。すると、その店のオーナーさんが「中原さんが来るよ」と、自分のことを知ってくれているその地域の作家さんたちに話してくれて。「じゃ、夜の食事だけご一緒してもいいですか」と来てくれる人たちを集めるんですよ。
それで「それなら、これを作ってもらおう」とか、いろんな人とのネットワークができ始めました。これは面白いなと思って。
特に店もなくて「言われたら、作るだけです」とか「地元で、少しずつ売ってます」という人は結構いました。まだインターネットでみんなが自分で販売するような時代じゃなかったので。これはもったいないなというものがふつふつとあり、ある程度の数が集まった時に、自分のその展示会にジョインにしてもらって、ちゃんと繋がりのあるトレードショーができたら面白いなと思って。年々、人が加わって、最終的に120社ほどになりました。
小仲 中原さんは、その地域での繋がりを 大切にしつつ、それをもっと広げたい、知らしめたいという想いがあったんですね。
中原 なんかね、魅力がある人たちがいるし、とにかく紹介したくなっちゃうっていう。これが一番健全だなと思いましたし。
小仲
僕はその展示会を拝見して、そのバックグラウンドにある雰囲気に、熱いものを感じました。若い方も多いし。中原さんを信頼して背中を追って来られている人たちの想いが。
昔の学生たちの間の番長みたいなのものなかなと。
中原
昨日、一昨日も、三重から奈良に行って、吉野の杉の産地を視察に行ったんですが。
そこでもやっぱり、着いたらすでに僕の友達がいろんな人を集めていまして。
一方では、自分がずっとそこにいなくても、いろんな情報が入ってくるようになったなとは思います。ちゃんと考えていろんな人を集めてくれているので。いいもの作りしてる人や、いい技術持ってる人たちもいて、面白いです。
小仲 人と繋がることによって、いろんな価値が生まれたり、新たなものが生まれていく。
中原
そういう意味では『FOR STOCKIST』は、自分たちが流通をする上で、ある程度の新しい動きを生み出せたと思いました。
そのなかから有名な店が生まれたり、有名なブランドが生まれたりしましたから。そういう意味では、そこで生まれた関係性は、未だに大きいですね。
中原慎一郎さんプロフィール
株式会社コンランショップ・ジャパン 代表取締役。
1971年鹿児島県生まれ。「ランドスケーププロダクツ」ファウンダー。
東京・渋谷区にてオリジナル家具などを扱う「Playmountain」、カフェ「Tas Yard」などを展開し、家具を中心としたインテリアデザイン、企業とコラボレーションしたプロダクトデザインも行う。
2022年4月に株式会社コンランショップ・ジャパンの代表取締役社長に就任。
株式会社日本香堂ホールディングス
https://www.nipponkodo.co.jp/company/
構成・森綾(フレグラボ編集長)
撮影・萩庭桂太