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    第6回:中原慎一郎さん・小仲正克社長

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西海岸には独特のルールはあるが、自由。もともと歴史がないが故に、いろんなものを受け入れる(中原)

小仲  世界の風景に出会っていらっしゃる中原さんと「Yohaku」というブランドを一緒に作らせていただきました。
 最初、4つの風景のイメージをご提案いただきました。「Sunrise」、「Monktree」、「Hayes Valley」、「Moon Jazz」。あの、なんとなく「Sunrise」とか「Moon Jazz」というのはイメージが湧いたのですが「Monktree」とか「Hayes Valley」、このあたりの中原さんのイメージはどういうものだったのですか。

中原  何かするときのシーンを、思い浮かべたんです。時間帯で分けて考えました。朝起きたとき、集中して仕事をしているとき、その後のなんとも言えない、レイジーな時間、夜という感じ。「Black Mountain」は、季節ものとして考えました。
 なので、朝、昼、午後 、夜。その時間に応じた名前の付け方をしたつもりではいるんですけど。
 ただその際、都会にいるというイメージよりは、どっちかというと、郊外の畑のあるようなオーベルジュや、誰かの家に泊まったときの朝、というようなイメージでした。
 そういう静かなところで、本読んだり、少し仕事したりとか、書き物するときのイメージに合うように調香してもらいました。
 「Hayes」も「haye」というのは干し草の香りのするシダのような草なんですが、農場に干し草が積んであるような景色が思い浮かぶような香りにしたかったんです。

小仲  そうですね。「Yohaku」のイメージは、日本というよりはアメリカの原風景のようなところがありますね。

中原  日本にもそれに近しい風景はあると思います。あと『Moon Jazz』は、その頃、僕もウイスキーの仕事もしていたので、夜の時間の使い方にもそういう気持ちの余白が出るようなものはないかと、考えた名前です。

小仲  なるほど。最後にできたのが「Black Mountain」ですね。

中原  「Black Mountain」というのは、シーンというよりは、物事の始まりの場所、という意味合いでつけました。
 ヨーロッパで始まったバウハウスが1933年に閉校させられて、ノースカロライナにあるブラックマウンテン・カレッジにそこの先生が移住してきて、いろんな人たちがアートの実験をしたんですね。そこに後に人間国宝になる益子焼の浜田庄司さんたちもいて、デモンストレーションして日本の器の面白さを伝えたりしたんです。そこからいろんなものがアメリカのアートを変えていったみたいなとこがあって、そういうなんか始まりの場所みたいなイメージをもちました。
 だからこの香りだけは、時間軸からのイメージとは違うんです。

小仲  そういう話を聞くと、行ってみたくなりますね。

中原  YMCAか何かの学校が、今、そこの跡地を使っているんです。僕も一度行ったんですか。
 りんご農園がいっぱいあったりして、イギリスから来たシェイカー教の人とかがいて、家具を作ったり、独自の生活スタイルをもっていて、だからこそいいものがあったりするんですよね。

小仲  うちの子どもも、ユタやバージニアにいるんですが、学校に行く道を車で運転していると、カントリーの音楽が合うんですね。人も優しいし、ピューリタンの質素・倹約・隣人愛みたいな文化がまだ残っていたりする。アメリカの田舎の良いところですね。

中原  僕は真ん中の方も結構好きですし、それぞれ違いますよね。
 サンフランシスコやロスに移住した人は「東に行くほどヨーロッパの影響が大きくて、西に行くと自由がある」と言っていましたけれど。「どうして西に移ったの」と聞いたら「ここにはチャンスとホライズンがあるから」っていう言い方をしていました。
 ホライズンというのは、地平線が日の光で発光しているように見える、あの景色ですね。そこには深い意味はなくて、本当にホライズンを求めていたみたいです。

小仲  なるほど。中原さんにとって、アメリカはやっぱり西海岸ですか。

中原  自由さがありますね。カリフォルニア・マインドなどと言いますが。独特のルールはあるんですが、自由は自由。もともと歴史がないが故に、いろんなものを受け入れるっていうのが非常にありますね。

小仲  受け入れないと、まとまらないというのもあったりするし。
 風土や自然も、日本のそれと全然違うわけですよね。強い自然。寒暖差も強いし、植物も強い。そういうものが生み出す空気というのも大きいのかもしれませんね。

中原  日本は、塀の文化がありますよね。古い屋敷には、家の前を塀が囲んでいる。
 でもカリフォルニアは、塀がないんです。いきなり他人が入っていける。
 ところが、日本は塀のなかに一度入ると、なかの障子に鍵がないじゃないですか。
 アメリカの面白いところは、誰でも入れるんですけど、それぞれの玄関にはちゃんとセキュリティ会社のマークがある。それがなんかアメリカっぽいなと思って。
 人付き合いも然りで。日本人は一度なかに入った人に対してはオープンだし、自由に使ってくださいみたいな。アメリカはドアにまず鍵がある。
 パーティーがあっても日本のように二次会、三次会はないみたいな。家に人を呼んで食事したりしても「もう帰ってください」とは言わないまでも、そろそろ帰ってね、みたいな雰囲気を醸すことはありますね。

中原慎一郎さん・小仲正克社長

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