熊谷 こういう時代ですから、ZOOMで会話ができたり、メールでやりとりもできましたが、本業がそれぞれありますから。ゴールに近づくにつれ、バタバタと決め事をした感もありますが、いろいろ話し合えてよかったです。
小仲 最初はゼロスタートで、何も決まっていませんでしたからね。そのうち「香り博」という名前が決まり、 最終的にはこういう形になりましたけど。そこに行くまでには紆余曲折がありました。
熊谷 そうですね。みんな、欲が出てくるんですよね。とりあえずやってみようからスタートしたんですけど、やり出したら、いや、ホームページもいるよとか、プレスリリースもいるよとか、 どんどん仕事が増えていきました。
小仲
「香り博」というのは熊谷さんが出してくださったアイデアで。ちょうど大阪で大阪万博の話があり、でも万博は大げさだから、香り博ぐらいにしとこうかと。
その前には一緒に商品作ろうかとか、 イベントではなくて、みんなでワンブランドで商品作りましょうというような企画もありました。
そのワンブランド商品を3社のそれぞれの店舗で売ってもいいじゃないですか、というような。ところが、先ほど熊谷さんがおっしゃったように販路の違いなどいろんな難しさがあり、それは今回は諦めました。
そこで、それぞれの会社に古い商品や昔のものがあるので、それはお見せしたらどうかなと。
熊谷 今、3人で話しているこの場所でそういう話が出たかもしれませんね。ここに昔の毎日香のパッケージがあったりしたので。すごいですね、という話になって。
小仲 そうですね。あそこにちょうど昔の商品があるんで、あれすごいいいですねってという話をして。復刻というか、見せられるだけでもいいですね、みたいな感じからでした。確かに。
畑 それぞれ銀座、京都にも店舗がありますね、という話をしました。そこに歴史的資料を展示しようというアイデアも生まれました。
熊谷 みなさん、見てくれますかねえ。そういうものを。
小仲 凄いですよ。今回、鳩居堂さんは国宝の「藤原行成筆仮名消息」を忠実に復元したものを出展されるんですけど。国宝そのものを出すわけにはいかないので、その写本をお作りいただいたんですよね。
熊谷 900年来伝承されてきた「宮中御用の合わせ香」の秘方をすべて伝授され、平安朝に生まれた日本の香りを今なお作り続けております。その時代の香りを聞きながら、平安時代の恋文を見ていただければと思っております。これは京都鳩居堂のみの展示です。
畑 すごいですね。
小仲 僕はまだ写真しか見ていないんですが、すごくエレガントな書ですね。
熊谷 平安時代から伝わる薫物の総称を「六種の薫物(むくさのたきもの)」というんですが、その時代に実際に使われていた香りと、その時代に藤原行成が書いた恋文(仮名消息)を一緒にご覧いただければと思いまして。
畑 それはいいですね。ぜひ拝見して味わいたいです。
小仲 そのような形ができると、まさに時空に超えるような体験ができますね。
熊谷 1か月というと短いのでね、話題性も必要だし、その香りは実際に足を運んでいただいて味わえるものですからね。皆さんに「行ってよかった」と思ってもらえたら嬉しいですね。
小仲 日本香堂は『後伏見院辰翰薫物方』『後小松院辰翰薫物方』の、写本を展示します。先ほど「六種の薫物」の話がありましたが、日本って素晴らしいと思うのは、当時から天皇家には独自の薫物があり、その処方を掲載した書籍の一部がが国立図書館にも引き継がれている事です。
畑 そういうものをお持ちだというのはすごいですよね。
熊谷 ただ見ていただくだけではなく、香りを聞きながらという、空間づくりを考えました。