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    第100回:葉加瀬太郎さん(ヴァイオリニスト)

《3》香りと記憶が一番繋がっている

 早くから才能にあふれ、音楽の道しかなかったように思える葉加瀬さんですが、もし音楽家にならなかったら、料理人になっていたかもしれないそう。

「音楽家になってなかったら料理人になるはずでした。本当に東京藝大に入れなかったら、ヴァイオリンは辞めようと思っていたのです。父親がワインのソムリエを育てる先生をしていましたし、料理の世界はさほど遠いものでもなかった。今は気分転換にできますけどね」

 高校時代の葉加瀬さんは、香りにまつわる職業も漠然と興味をもっていました。

「ウィスキーのブレンダーと調香師も憧れていました。高校1年生のときから香水は毎日欠かしたことがありません。普段使っているだけでも20~30種類あります」

 尊敬する調香師はジャン=クロードエレナ。

「エルメスの調香師からフリーになって活躍している天才です。『ナイルの庭』シリーズなどは彼の作品ですね」

 葉加瀬さんは嗅覚も相当研ぎ澄まされた方なのでしょう。

「誰でもそうかもしれないけれど、香りと記憶が一番繋がっていて、僕は香りや匂いで記憶していることが多いです。学校の匂い、ヴァイオリンの先生の家の複雑な香り。カーペットやピアノや煙草や楽譜の匂いが混ざり合っていて。それから、ホールごとに香りが違う。いつも舞台に立つと深呼吸して、その場所を確かめる自分がいます」。

葉加瀬太郎さん

《4》職人気質とエンタテイナー気質の才能を持ち合わせる人

 学生時代からコンサートを企画してきたという葉加瀬さん。作り上げるという舞台裏の作業にも心血を注ぐ姿があります。

「コンサートはお祭りやパーティーを作るようなものですから。2時間を夢のように過ごしてもらうための、ね。作っているときは楽しいですよ。でも、本番の5分前は緊張してお客さんがいなかったらいいのにと裏腹なことを思ってしまう(笑)。だって、2000人、3000人の前で結婚式のスピーチをするようなもんですからね!修行のようなものです。本番というのは最後の出口。モーメントでしかない」

 職人気質とエンタテイナー気質。両方の才能がせめぎ合って、サービス精神が最後に顔を出します。

「人が喜んでくれるのが好きなんですよ。褒めてもらったら嬉しいし。音楽作るのも、今は仕事になっていますけれど、毎日遊ばせてもらっているような気持ち。僕、53歳の男としてできないことはありますよ。車の運転もできないし、FXとか言われてもわからないし。もうね、音楽と料理と絵と釣りが好きな中2の少年のまま暮らそうと決めたのです。そうやって全力で遊ぶ。いつも羽ばたいて遊ぶ。それが芸術をする人の役割でしょう」

 私たちはそんな葉加瀬さんが羽ばたく羽音を聴いているのかもしれません。人生が音楽になる。そしてその音楽はまた、聴く人の人生とともにあり続けるのです。

葉加瀬太郎さん

  1. 3/3

葉加瀬太郎さん

葉加瀬太郎デビュー30周年
全曲オーケストラアレンジ 豪華ニューアルバム
2020年3月4日(水)発売

ザ・シンフォニック・セッションズ

葉加瀬太郎Official Websiteはこちら


《撮影場所》
ソムリエの選ぶ確かなワインと和テイストのある味のイタリアンレストラン。
常連客も多く、静かで優雅なひとときがここにあります。

ジャパニーズイタリアン
『ai's』(アイズ)
Tel:03-6712-6201
住所
〒150-0012
東京都渋谷区広尾1-1-38
スクエアサイドビル1F

営業時間等はお問い合わせを。

取材・文 森 綾
フレグラボ編集長。雑誌、新聞、webと媒体を問わず、またインタビュー歴2200人以上、コラム、エッセイ、小説とジャンルを問わずに書く。
近刊は短編小説集『白トリュフとウォッカのスパゲッティ』(スター出版)。小説には映画『音楽人』の原作となった『音楽人1988』など。
エッセイは『一流の女が私だけに教えてくれたこと』(マガジンハウス)など多数。
http://moriaya.jp
https://www.facebook.com/aya.mori1

撮影 初沢亜利(はつざわ・あり)
1973年フランス・パリ生まれ。上智大学文学部社会学科卒。第13期写真ワークショップ・コルプス修了。イイノ広尾スタジオを経て写真家として活動を始める。
東川賞新人作家賞受賞、日本写真協会新人賞受賞、さがみはら賞新人奨励賞受賞。写真集に『Baghdad2003』(碧天舎)、『隣人。38度線の北』『隣人、それから。38度線の北』(徳間書店)、『True Feelings』(三栄書房)、『沖縄のことを教えてください』(赤々舎)。
近著はこちらから


2021.4.23 written by 森綾
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