9月にはミュージカル『ジャック・ザ・リッパー』のジャック役にダブルキャストで出演。実は舞台でもかなり活躍している堂珍さん。
「辻仁成さんが初めて書き下ろした舞台でも主役をやらせてもらったり、宮本亜門さんの舞台に出させてもらったり。舞台は、役に向かって自分に足りないことを学ぶものなんです。ポップスのフィールドで1人のシンガーとして活動するときは自分で考えて自分で決めていますが、舞台で学んだことをまたソロの自分に補える」
一方で、20周年を迎えるCHEMISTRYならではの面白さもあります。
「2人でうたうときは、R&Bの中にも常にポップスがある。自然と声がよりマイルドになるというか。1✖️1が1ではなく、2にも3にも4にもなっていく。それがバンド名の由来でもあるようにね。オーディションで巡り合って20年、ってなかなかないことでしょう。いろいろな時期があったけれど、お互いがお互いを認め合えて、一つになろうってことですからね。ちゃんと楽しんでアニバーサリーをみんなでお祝いできたらと思っています」
まさに今年は、デュオ、ソロ、舞台と全開。
「そうですね。CHEMISTRY、ソロ、舞台のトライアングルを続けていくなかで、自分のなかでいろんなものが新しくうまれていく。良い循環ですね」
その良い循環のなかで、今、最も意識していることは、人間くささ。
「時々、僕の舞台を見た人に『人間くさい』と言ってもらえるのは結構嬉しい。欲望のままであったり、思い悩んだり、手放しで喜んだり。観客はそういう舞台の上の人たちの人間くささを観に来るんじゃないかな。それも広い意味では『香り』でしょう」
堂珍さんは実際の「香り」にもかなり敏感で、そこからたくさん感じることがあると言います。
「香水は使わないけど、金木犀の香りは好きです。田舎の思い出が蘇ります。僕は結構香りには情報量があると思っています。おはようございます、って、挨拶をしてすれ違った時に、シャンプーの香りだけじゃなくてうっすら汗の匂いがしたら、走ってきたのかな、とか。夕方に良い香りがする人にあったら『パーティーにでもいくのかな』とか」
時折、レコーディングでも良い香りがすることが。
「いいのが録れた時に『いいことが起こりそうな匂いがするね』と言い合ったりしますよね。
だからきっと、音楽にも香りが漂っているんだと思います」
ひとつひとつの問いかけに、これまでの経験を重ねて答えてくださる真摯な言葉が印象的だった堂珍さん。このアニバーサリーイヤーは、きっと多くの人々に希望の香りを届けてくださるものとなるでしょう。
公式サイト
堂珍嘉邦さん公式サイト
https://dohchin.jp/
CHEMISTRY公式サイト
https://chemistry-official.net/s/a001/?ima=5020
「ハチとパルマの物語」公式サイト
https://akita-movie.com
取材・文 森 綾
フレグラボ編集長。雑誌、新聞、webと媒体を問わず、またインタビュー歴2200人以上、コラム、エッセイ、小説とジャンルを問わずに書く。
近刊は短編小説集『白トリュフとウォッカのスパゲッティ』(スター出版)。小説には映画『音楽人』の原作となった『音楽人1988』など。
エッセイは『一流の女が私だけに教えてくれたこと』(マガジンハウス)など多数。
http://moriaya.jp
https://www.facebook.com/aya.mori1
撮影 ヒダキトモコ
フォトグラファー。日本写真家協会(JPS)、日本舞台写真家協会(JSPS)会員。
米国で幼少期を過ごす。慶應義塾大学法学部卒業。人物写真とステージフォトを中心に撮影。ジャケット写真、雑誌の表紙・グラビア、各種舞台・音楽祭のオフィシャル・フォトグラファー。官公庁や経済界の撮影も多数。
https://hidaki.weebly.com