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    第104回:野村義男さん(ギタリスト)

《4》時間をかけて煮込む。『野村パスタ』の唯一無二の香り

 さて、好きな香りの話をしていただこうとすると、野村さんは「美味しい香りもあり?」と、にっこり。
 もちろん、と頷くと、とっておきの美味しい香りの話が。

「うちは家族5人なんですが『野村パスタ』っていうのがあってね。このソースのレシピは非公開なんですが、4時間煮込んであるんです。その香りが漂うと、おおっ、これは!!と嬉しくなる。
そのソースが鍋にいっぱい入ってて、隣にスパゲッティがドーンと茹でてあって、ソースをかけながら食べるんです。もともとは、母の姉、つまりの伯母が作っていたパスタで、母方は大家族だったから、こんな食べ方をしたんだと思います」

野村義男さん

 子ども時代から野村さんが食べ続けている味。

「そう、あの香りを嗅ぐと、子どもに戻っちゃいます。2日目のカレー状態に煮込まれたのも美味しくてね。実家と店は分かれているんだけど、学校から帰って来て、その2日目のソースを見つけると、まずは自分であっためて先に食べていました。その時の香りも良かったなあ。食べてから親のいる店へ行って『ただいま』って言ってたくらい」

 こっそり教えてもらったレシピを再現してみました。
 2時間半ごろまでは普通に甘い香りが漂っているのですが、そこから先、さらに焦げないように煮詰めていると、まるでカラメルのような深い香りへと変化します。出来上がりは、シンプルな材料とは思えないほどの、洋食屋さんのデミグラスソースのような味わい。

 ふと、飾らないけれど本物で、芯の音を安定して演奏する野村さんの音楽に近いような気がしました。

「僕は怖がりで弱虫。できることだけをやってきたんだと思います」

 そんな呟きがこぼれたのも、極めてゆく人の謙虚な心もちから。時間をかけて熟成されてゆく野村義男さんならではの演奏はこれからもますます香りを深めていくのでしょう。

野村義男さん

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取材・文 森 綾
フレグラボ編集長。雑誌、新聞、webと媒体を問わず、またインタビュー歴2200人以上、コラム、エッセイ、小説とジャンルを問わずに書く。
近刊は短編小説集『白トリュフとウォッカのスパゲッティ』(スター出版)。小説には映画『音楽人』の原作となった『音楽人1988』など。
エッセイは『一流の女が私だけに教えてくれたこと』(マガジンハウス)など多数。
http://moriaya.jp
https://www.facebook.com/aya.mori1

撮影 初沢亜利(はつざわ・あり)
1973年フランス・パリ生まれ。上智大学文学部社会学科卒。第13期写真ワークショップ・コルプス修了。イイノ広尾スタジオを経て写真家として活動を始める。
東川賞新人作家賞受賞、日本写真協会新人賞受賞、さがみはら賞新人奨励賞受賞。写真集に『Baghdad2003』(碧天舎)、『隣人。38度線の北』『隣人、それから。38度線の北』(徳間書店)、『True Feelings』(三栄書房)、『沖縄のことを教えてください』(赤々舎)。
近著はこちらから


2021.6.3 written by 森綾
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