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    第114回:浅葉克己さん(アートディレクター、クリエイター)

《3》ひとりピンポン外交で北極でも卓球を

 浅葉さんといえば、もう一つ本気でやっている趣味とも仕事とも言えないことが、卓球です。
 『卓球王国』という隔月の雑誌の連載エッセイは204回を迎えました。
 今も毎週卓球場に通い、これまで卓球をしに出かけた場所も、中国、香港から北朝鮮、北極までと、これまた尋常ではありません。

「卓球はデザインを仕事で始めた頃と同時に始まっています。ひとりピンポン外交と称して、中国に行ったら、観衆が1000人もいてびっくりしました。北朝鮮にも行きましたし、北極選手権もやりましたね。植村直己が北極点に到達した時に、糸井重里と富永民生と北極圏人会を作ったんだよ。その時、ブラッドべリーエアサービスというホテルに泊まったら、卓球台があったんです。そこで北極圏選手権をやって優勝しました。相手は素人だからね(笑)」

 浅葉さんにとって卓球は単なる趣味ではなく、人との交流、仕事とも大きく結びついているのです。
 9月4日から10月24日まで石川県珠洲市全域で開催される「奥能登国際芸術祭2020」では『石の卓球台第3号』を製作、さいはてのキャバレーに展示されます。
 この芸術祭のテーマは「最涯(さいはて)の芸術祭、美術の最先端」。

浅葉克己さん

浅葉克己さん

「この場所は昔は佐渡島からフェリーが着いたそうなんですが、今は来なくなってしまって。でも岸壁のフェリー着き場は人が一番集まる場所だというので、そこをさいはてのキャバレーにして、卓球台を置くことにしたんです。この卓球台は四国の石屋さんで作ってもらったんだけど、9トンもあってね。そろそろだなと電話したら『動かせません』っていうんだ。事務所の前に置いてあるというので、とりあえず、卓球大会もまずそこでやりました」

 どんなピンチも楽しいことに変えてしまう浅葉さん。世界中を旅して、ピンチをピンチを思わない心臓が出来上がったのかもしれません。
 一時は年に10回くらい海外へのロケへ出かけていたそう。
 いつぞや、北京からパリでの旅ではこんな事態も。

「北京のディスコで、イラク人が暴れててね。人間違いでこっちに向かってきて乱闘になってさ。僕は極真空手をやってたから、一発蹴りを入れてやろうと思ったら、ディスコの床がツルツル滑ってさ。ゲンコツがかすって。次の日はパリに行かなきゃいけなくて、ホテルに着いたら、どうも耳に水が溜まってきた。これはいかん、医者を呼ぼう、と思って。部屋の電話の受話器を取ってフロントの人に「SOS、シルブレ」と言ったら、がちゃんと切られた(笑)」

 死にそうな経験も笑い話にしてしまう。浅葉さんの凄さは、そうして人生の一瞬一瞬と真正面に向き合って味わいながら、また創造の力へに変えていくこと。

「いろいろやって来たから、新しいことを探すのは大変だよね。でも、探さないと生きていけないからね」

 穏やかに飄々と。しかし何かを新しいことを捕まえるときは、大胆不敵に。浅葉さんのそのエネルギーはまだまだ次の時代を切り開くためにも必要とされていくでしょう。

浅葉克己さん

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●「天国と地獄。浅葉克己展」チラシの映像データとインフォメーション
https://zoomedia.sakura.ne.jp/project/2021asabaten/index.html
浅葉克己さん 浅葉克己さん
●奥能登芸術祭のインフォメーションとホームページ
https://oku-noto.jp/ja/index.html


取材・文 森 綾
フレグラボ編集長。雑誌、新聞、webと媒体を問わず、またインタビュー歴2200人以上、コラム、エッセイ、小説とジャンルを問わずに書く。
近刊は短編小説集『白トリュフとウォッカのスパゲッティ』(スター出版)。小説には映画『音楽人』の原作となった『音楽人1988』など。
エッセイは『一流の女が私だけに教えてくれたこと』(マガジンハウス)など多数。
http://moriaya.jp
https://www.facebook.com/aya.mori1

撮影 初沢亜利(はつざわ・あり)
1973年フランス・パリ生まれ。上智大学文学部社会学科卒。第13期写真ワークショップ・コルプス修了。イイノ広尾スタジオを経て写真家として活動を始める。
東川賞新人作家賞受賞、日本写真協会新人賞受賞、さがみはら賞新人奨励賞受賞。写真集に『Baghdad2003』(碧天舎)、『隣人。38度線の北』『隣人、それから。38度線の北』(徳間書店)、『True Feelings』(三栄書房)、『沖縄のことを教えてください』(赤々舎)。
近著はこちらから


2021.9.22 written by 森綾
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