せんださんは2年前に生島ヒロシさんの事務所に入りました。
「昔、世田谷区民プールで金髪時代のヒロシさんが子どもと遊んでいてね。『生島!』と声をかけたら『せんだ先生』って言ってたんだよ。当時はアナウンサーと有名タレントだからね。今はもう僕が『生島会長、よろしくお願いします!』って深く頭を下げています」
最近、そんな2人がコンビを組んで漫才を始め、時々、演芸場をわかせています。
「生島さんは常識派、僕は非常識派。先日は浅草演芸ホールに出させてもらいました。たまたま神田伯山さんと同じ日に出演して、大入満員。普通、演者は、出演したらそのまま帰っちゃうんですけど、伯山さんは、2階席から見ていてくれて『最高でした!』って、また楽屋に言いに来てくれたんですよ。嬉しかったですね」
インタビュー中も、せんださんは私たちスタッフをどこから笑わせようかとエピソードの引き出しをあちこち開けてくださいました。生島さんとのコンビはこれからが楽しみです。
人を楽しませることに一生懸命なせんださんは、香りにも心配りがありました。
「僕が髭が濃いので、必ず電気シェーバーを使って、髭剃り後に、アフターシェーブローションをつけるんです。それが僕の香り。ジャスミン系ですが、ほのかに香るからいいでしょう」
人の香りで記憶に残っているのは、女優の八千草薫さんと共演したときのこと。
「『一心太助』という時代劇で、八千草薫さんと共演させてもらったのですが、この人の良い香りは心に残っていますね。男は憧れの女性の香りを忘れない者です。ほのかな香り、でした」
せんださんは、人間の「香り」を嗅ぎ分け、どんな人かと考えていらっしゃるようです。
「人間をパッと見たとき、香りが違うな、っていうことがありますよね。ウマが合わないとか、気が合わないとか言うよりも『あの人とは微妙に香りが違う』っていう言い方って、やさしいでしょう」
時代とともに笑いが変わり、人のコミュニケーションが変わっても、大切なことは根底にそのやさしさがあるかどうかかもしれません。
せんだみつおさんは、そのやさしさを心の奥底に秘めている人。まだまだ違う表情がこれからの話芸に演技に、表れていくことでしょう。
取材・文 森 綾
フレグラボ編集長。雑誌、新聞、webと媒体を問わず、またインタビュー歴2200人以上、コラム、エッセイ、小説とジャンルを問わずに書く。
近刊は短編小説集『白トリュフとウォッカのスパゲッティ』(スター出版)。小説には映画『音楽人』の原作となった『音楽人1988』など。
エッセイは『一流の女が私だけに教えてくれたこと』(マガジンハウス)など多数。
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撮影 萩庭桂太
1966年東京都生まれ。
広告、雑誌のカバーを中心にポートレートを得意とする。
写真集に浜崎あゆみの『URA AYU』(ワニブックス)、北乃きい『Free』(講談社)など。
公式ホームページ
https://keitahaginiwa.com