緊急事態宣言下をどのように過ごしたかで、その後の人生はまた大きく変わるもの。リモートでのオーディションをきっかけに世界進出まで果たした南さんの生き方はまさにその成功例と言えるでしょう。
「こういうときだからやれることをやろうと思いました。まず自分を見つめ直す時間にしよう。この時を生かすも殺すも自分次第だと思ったんです」
彼女は文章も上手い人。したためたエッセイは『乙女オバさん』という1冊になりました。
「亡くなった瀬戸内寂聴先生からいつも、あなたは書く人間ですよ、と言ってくださったんです。いつでも帯を書いてあげるから、と。今回間に合わなくて申し訳なかったのですが、いつも先生の言葉は心にあります」
10年ぶりのエッセイには、二度の結婚と離婚、出自、息子さんと娘さんのこと、キャンサーギフトと、人生観までが颯爽と綴られています。
「何にでも臆せずトライしなきゃと思いました。情熱だけが道しるべ、という自分の生き方もはっきりしました。心の中でずっと鍵をかけていた場所も全部開こう。もうやりたい順に、やりたいことをやろうと」
「運動嫌い」という扉も開いて、筋トレも始めました。
「プランクで10カウントとかいまだに苦手ではありますけど、ちょっとずつお腹に縦線が入ってきたりするとなんだか嬉しくて。それに、本当にカラダが資本ですからね。アントニオ猪木さんの『元気があればなんでもできる』って名言だと思います!!」。
五感に優れ、衣食住を楽しむことにも長けている南さん。香りもバラエティに富んだ楽しみ方をご存知です。
「楽屋では常にお香をたいていますし、アロマオイルも使います。旅先には、お香とアロマエッセンスのセットを持参します。ラベンダー、フランキンセンス、レモンバーム、ゼラニウム。よく使うものは何種類かあります。沈香や白檀も好きですよ。季節や気分によって使い分けています」
仏壇はないけれど、仏壇コーナーを作っているというのも、南さんらしい素敵なアイデア。
「仏壇コーナーでは、その時々、いろんな香りをたてています。毎朝、ご先祖に手を合わせながら、香りも楽しんでいます。部屋をすっきりさせたい時は、セージをたいたりもします。一番好きなのは、そういうグリーンの香りかもしれません。森林のなかの匂いが好きなんです」
オフのときには、アートを見に行ったり、近場を旅したりしてリフレッシュされています。
「アートを見るのは好きです。見る前と見た後では確実に自分が変わっていますから。目に映るものは受け取る刺激が大きいので、できれば美しいものだけ見ていたい。見ないでいようとしても、いろんな悲しい重苦しいニュースは入ってきますからね。気持ちは美しいものや自然にあるものにどんどん触れさせてあげたい。ただ、自然は素敵だけれど、自然だけのなかでは私は暮らせないと思います。仕事場に戻らないといけませんから。リフレッシュして日常に戻ってくるために、旅に出るんです。道しるべは情熱、ですね」
情熱をたやさず、進化し続ける強い瞳が輝いていました。感性を磨き、これからも新しい自分に出逢おうとする生き方は、その若々しさの源なのでしょう。
■公式HP
http://www.kaho-minami.com/
■エッセイ『乙女オバさん』(小学館)発売中!
https://www.shogakukan.co.jp/digital/093888480000d0000000
■大人のおしゃれ手帖゛I am here!”(宝島社) 連載中
毎月7日発売
取材・文 森 綾
フレグラボ編集長。雑誌、新聞、webと媒体を問わず、またインタビュー歴2200人以上、コラム、エッセイ、小説とジャンルを問わずに書く。
近刊は短編小説集『白トリュフとウォッカのスパゲッティ』(スター出版)。小説には映画『音楽人』の原作となった『音楽人1988』など。
エッセイは『一流の女が私だけに教えてくれたこと』(マガジンハウス)など多数。
http://moriaya.jp
https://www.facebook.com/aya.mori1
撮影 萩庭桂太
1966年東京都生まれ。
広告、雑誌のカバーを中心にポートレートを得意とする。
写真集に浜崎あゆみの『URA AYU』(ワニブックス)、北乃きい『Free』(講談社)など。
公式ホームページ
https://keitahaginiwa.com