台湾で、願っていた俳優としての仕事を着々と得ている大久保さん。よほどこの国と縁があったのでしょう。5年前には結婚も。
「相手は日本で働いたことのある台湾人です。付き合って1年ぐらいで決めました。台湾のご飯会って友達が友達を呼んで大人数になるのですが、出会いはそのなかの1人として、でした。友達の誰かが『新鮮なライチを食べたことがない』と言ったとき、彼が知らない間に外へ出ていって、枝付きのライチを買って戻ってきたんですね。その時、私は憶えていないのですが、私は仲の良い友達に『将来、結婚するならこんな人がいいね』と言っていたそうです」
現在、その優しい彼と幸せに暮らしている大久保さん。時折、YoutubeなどSNSでは2人の姿が見られることもあります。
プライベートもしっかりと根を張り、気持ちもさらに前向きに。また距離は近いので、日本での仕事も再開しつつあります。
「日本でも頑張りたい、と思っていた矢先に、コロナ禍が来ました。でもその前に『種まく旅人〜華蓮の輝き〜』という映画を撮っていて、コロナ中に上映されました。親も九州にいますので、また日本での仕事がしたいです。そうだなあ。近未来の話なんて楽しそうですね」。
大久保さんは数ヶ月前に、新型コロナに罹患し、一時的に嗅覚が無くなったと言います。
「1週間ほどでしたが、何もにおわなくなってしまい、世界がモノクロに見えて落ち込みました。私は香りを日常的によく使っているので。仕事から帰ってきて緊張や興奮をさましてくれるのが、アロマですよね。私は、ステージに上がる時も平常心でいられるように使います。ラベンダーとクラリセージが多いです。お香は台湾にはなかなかないので、日本で買って帰ります」
記憶と香りが繋がっているということも最近、体感しました。
「長いこと、コロナで日本に帰れなかったので、亡くなった祖母の家が取り壊されるというとき、母が少し遺品を送ってくれたんです。それを手にしたとき、ふっと祖母が使っていたお香の香りが漂ったような気がしました。記憶の中の香りが呼び覚まされたんですね」
繊細な日本人としての感性と、台湾で培ったおおらかさの両方が、今の大久保さんにはあるようです。
「日本にも台湾にも”おもてなし”の心はありますが、日本のそれはより細やかで精神性が深く、台湾のそれは間口が広く、距離が近い気がします」
ただ美しいだけではなく、そこにいるだけで心が和むようなあたたかさがある人。
大久保麻梨子さんは、これからも二つの国をやさしくつなぐ仕事をしてくれるでしょう。
大久保麻梨子さんの公式Youtube
https://www.youtube.com/@marilog0907
インスタグラム
https://www.instagram.com/marilog0907/
取材・文 森 綾
フレグラボ編集長。雑誌、新聞、webと媒体を問わず、またインタビュー歴2200人以上、コラム、エッセイ、小説とジャンルを問わずに書く。
近刊は短編小説集『白トリュフとウォッカのスパゲッティ』(スター出版)。小説には映画『音楽人』の原作となった『音楽人1988』など。
エッセイは『一流の女が私だけに教えてくれたこと』(マガジンハウス)など多数。
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撮影 萩庭桂太
1966年東京都生まれ。
広告、雑誌のカバーを中心にポートレートを得意とする。
写真集に浜崎あゆみの『URA AYU』(ワニブックス)、北乃きい『Free』(講談社)など。
公式ホームページ
https://keitahaginiwa.com