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    第155回:清水西谷さん(弦楽ユニット)

《3》その日あったことを思い浮かべた日記のような曲づくり

 2人は7年前に1stアルバム『KODO』をリリース。清水さんはタイトル曲を1時間もかからず書き上げたのだとか。

「勢いでできちゃったけど、作品って、勢いが説得力を持つということもあるのです」(清水)

「『KODO』は、我々の代表曲の一つになりました。バックのオーケストラの音は、2人で全員分のパート弾いて、多重録音したんです。オーケストラはいろんな人がいてこそ、みんなの響きが重なる。だから、1人ずつ性格を変えて弾いてるんですよ(笑)。20人の清水、20人の西谷では揃いすぎてしまう。若い女の子、おじさん、早めに突っ込んで弾く人、寝坊してちょっと遅めな人、とか」(西谷)

 こうして出来上がった『KODO』は、壮大なオーケストラをバックに2人が前で弾いているように聴こえます。ところが、困ったのは、いざ、2人でライブをするとき。

「ライブではピアノの朝岡さやかさんに入ってもらって多重録音したパートの分をカバーしてもらってきました。そうこうしているうちに、3人で演奏する用の曲が溜まってきた。それで、今回の新譜『TRIO』は、ピアノトリオの曲のみを並べることにしました。全曲3人で、多重録音ではなく、セッション録音をしています」(西谷)

 レコーディングをしたのはコロナ直前。その次の週からコロナ禍になりました。2年間、熟成させた『TRIO』は、優しさにあふれた楽曲が並びます。
 アルバムを締めくくる『小春日和』は、日本香堂の新製品『Blue Rose』のPVにも流れます。
 作曲したのは、清水さん。

「僕は『さあ、曲を作るぞ』という感じではなく、毎日、家に帰るとピアノに向かって、日記のように即興で弾いて作ることが多いんです。『作るぞ』と思って作ると、頭でこねくり回してしまって心がなくなる。その日あったことを思い浮かべながら作る方が、曲に起承転結が生まれるようです。そういうふうに作った曲がたくさんあって、手書きの楽譜で残していたなかに『小春日和』もありました」

 『小春日和』は、それまでの寒さや寂しさのようなものがあって、あたたかさ、優しさに辿り着いたような時間を感じさせる、美しい曲です。きっと清水さんにとっても、幸せな日の思い出が詰まっているのかもしれません。

西谷さん

《4》香りが心を和ませるような音を

 それぞれの想いを音で表現する。そのハーモニーがまた美しく人の想いを満たす。素敵なデュオのお二人は、香りについても身近に感じておられます。
 インタビューは、日本香堂の「青雲記念館」で行われましたが、その部屋の香りを「懐かしい」と言ったのが清水さん。

「僕は姫路のお寺に生まれたんです。小学校の時は、通学の前に、住職だった祖父と朝のおつとめ、つまりお経を唱えて通学するのが日課でした。習慣になっていたので、嫌だと思ったことはありませんでしたね。本堂を雑巾掛けしたり、そういう日々の習慣もありました。だからお香の香りは懐かしく、落ち着く香りなんです」

 一方の西谷さんは、最近、アロマの効能を実感しているそうです。

「ある方に教わった天然のアロマの香りを、生活に取り入れるようになりました。真夏のうだるような暑さの日や、頭痛を感じるときに、ミントのアロマを首につけたり、吸ったりすると、本当にすっきりするんですよね。アロマって、主に女性が嗜好で使うようなものなのかなと思っていたのですが、実際に心身を健康な状態に整えてくれるものだと知って、よく使うようになりました」

 これまで生きてきた道が個性をつくり、混じり合う。デュオが奏でる音は、やはり相性の良い香りが混じり合うのに似ているかもしれません。

「純粋に良いものを作りたい、という思いでやっています。曲のストックもまだまだあるので、形にしていきたいと思います」(清水)

「少しでも多く作って、2人で色んなところで演奏していきたいですね。確かにパッケージの時代ではないかもしれませんが、デザインもアートワークもあるCDって、やっぱり残したい気もします。音楽は香りのように目に見えないですが、香りが心を和ませるように音を届けて行けたらと思います」(西谷)

 音楽の中でも、とりわけ弦の音は良い香りに似ている気がします。それぞれが各々の場所で活躍しながら「清水西谷」として一つの香りを奏でる。その貴い時間と空間に、また心泳がせたいとしみじみ思いました。

清水西谷さん

 サントリーが開発した青いバラを祈りの形へ。日本香堂「Blue Rose(ブルーローズ)」。
 こちらのPVには、清水西谷さんの『小春日和』が流れます。

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取材・文 森 綾
フレグラボ編集長。雑誌、新聞、webと媒体を問わず、またインタビュー歴2200人以上、コラム、エッセイ、小説とジャンルを問わずに書く。
近刊は短編小説集『白トリュフとウォッカのスパゲッティ』(スター出版)。小説には映画『音楽人』の原作となった『音楽人1988』など。
エッセイは『一流の女が私だけに教えてくれたこと』(マガジンハウス)など多数。
http://moriaya.jp
https://www.facebook.com/aya.mori1

撮影 萩庭桂太
1966年東京都生まれ。
広告、雑誌のカバーを中心にポートレートを得意とする。
写真集に浜崎あゆみの『URA AYU』(ワニブックス)、北乃きい『Free』(講談社)など。
公式ホームページ
https://keitahaginiwa.com


2023.2.6 written by 森綾
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