浜松にはフラワーパークもあり、熊谷さんは四季折々の花とふれあうのが楽しみの一つだと言います。
「私、長く東京に忙しく暮らしていて、季節の花を季節通りにきれいな時期に見ることがなかったんですよね。四季折々に花を見ることって、こんなに贅沢なんだと感動しています。庭に金木犀と梅の花があって、2月にはまず梅が咲きます。外ではあまり感じないのですが、ひと枝折って、家の中で花瓶にさすと、すごく香るんです」
日々を自然と共に、暮らすこと。自分のままであること。俳優である彼女にとって、当たり前に暮らす幸せはようやくここにあるのかもしれません。
「役者の仕事って『熊谷真実』をどこかに置いておいて、役として物事を見ている時間が長いんです。セリフに魂を吹き込むから『熊谷真実』は空き家になっているような感覚。1日、7時間くらい芝居のお稽古していたとしたら、その人になっているのです。私はぶきっちょだから、自分の引き出しを全部開けて、役に投影してしまう。そうすると、本当に眠れなくなる。だから東京に一人でいて、よかったな、と思えることもあるのです。今、しみじみ『熊谷真実』という自分を生きることを考えています」
どんな役を演じ切ろうとも、まだまだ『熊谷真実』の実人生は続きます。
「そう、後はないから。老後、はない。人生の本当はこれから。これまでは序章だったんです。『マミィ!』のセリフにもこうあります。
『これから先のことがもっともっと大切だと思わない?』」
自分らしく、自分の時間を生きること。他人のせいにせず、それを自分で選び取ること。
熊谷真実さんの生き方が人に元気を与えるのは、彼女がどんな時も、自らがそういう生き方を志しているからではないでしょうか。
プリエール公演『マミィ!』の詳細はこちらから
https://www.oursongs-creative.jp/topic/archives/2591
取材・文 森 綾
フレグラボ編集長。雑誌、新聞、webと媒体を問わず、またインタビュー歴2200人以上、コラム、エッセイ、小説とジャンルを問わずに書く。
近刊は短編小説集『白トリュフとウォッカのスパゲッティ』(スター出版)。小説には映画『音楽人』の原作となった『音楽人1988』など。
エッセイは『一流の女が私だけに教えてくれたこと』(マガジンハウス)など多数。
http://moriaya.jp
https://www.facebook.com/aya.mori1
撮影 萩庭桂太
1966年東京都生まれ。
広告、雑誌のカバーを中心にポートレートを得意とする。
写真集に浜崎あゆみの『URA AYU』(ワニブックス)、北乃きい『Free』(講談社)など。
公式ホームページ
https://keitahaginiwa.com