14歳から10年間ほどは怒涛のように俳優の仕事を続けていた川上さん。20歳を過ぎ、舞台にも出始めました。
「ところが、24〜5歳の頃に仕事がパタリとなくなった時期があったんです。それで、やっと落ち着いていろいろ考え始めました。自分は何がしたいのか。それで、ものづくりに行き着いたんです。歌詞やエッセイを書いてみたり、ガラス工芸を始めたのもその頃。
両親ともに美大で教えていて、父は木工、母はテキスタイルをやっていましたから、そういうものを見ていたのもありますが。スウェーデンはガラス王国でもあり、両親はガラスには携わっていなかったので、自由度を感じたのかもしれません。吹きガラスを学んで、1990年後半から98年にかけてはかなりのめり込みました」
持ち前の集中力とセンスに加え、やはり芸術への素養もあったのでしょう。2005年にはとうとう個展を開くまでになりました。
「西麻布のギャラリーで、個展をさせていただきました。最初はモノトーンだったり、白いものから始めて。繊細なものはスケッチをしてスウェーデンの工房で職人さんにお願いしたこともあります。その後、2年に1回のペースで個展を続け2018年からは松屋銀座で個展をさせてもらっています。2016年には自ら経営する「SWEDEN GRACE」を東京・谷中にオープン。スウェーデンの小物と自分のガラス作品を置いています」
白にピンクのほんのりと色気のある酒器や、硝子に漆を載せたものなど、手に取ってみたくなる作品が並んでいます。
プライベートでは、大好きな2匹の猫と暮らす川上さん。2018年には一般社団法人「ねこと今日」を立ち上げ、ライフワークとして「猫と人がつながり、楽しく分かち合いながら生きていくこと」を提唱しています。
「猫が好きで、猫のことを話しているだけで幸せだったんですね。でももしもそんな人たちがたくさんいるとしたら、楽しくそんな想いを分かち合いながら、猫のためにもなり、人の役にも立つようなことができたらいいな、と」
ショップを構える谷中は、猫好きが集まる街。
「お客様の中には、ペットロスの問題も抱えている方も多く訪れます。さらに、猫の医療を見つめると、最期は病院で管だらけになって亡くなるケースもあって、人間の医療の問題と同じなんだと気づかされるんですよ。いかに命を削り、いかに幸せな最期を迎えるか。猫の場合は飼い主の腕の中で亡くなるのが一番なんじゃないか。人間だって、家で死にたいんじゃないか。そんなことを考えさせられるんですよ」
コロナ禍で俳優の仕事がお休みになった時間も、ガラスや猫のことがあったから、救われたと言います。
「何かを表現することは、ずっと続けていきたいんですよね。いつもそうしてきたから」
意思というよりも、自然と全てが表現になっている、というような。川上麻衣子さんの生き方は、まさに「LIfe is art」なのです。
川上麻衣子 公式サイト
http://kawakamimaiko.com
取材・文 森 綾
フレグラボ編集長。雑誌、新聞、webと媒体を問わず、またインタビュー歴2200人以上、コラム、エッセイ、小説とジャンルを問わずに書く。
近刊は短編小説集『白トリュフとウォッカのスパゲッティ』(スター出版)。小説には映画『音楽人』の原作となった『音楽人1988』など。
エッセイは『一流の女が私だけに教えてくれたこと』(マガジンハウス)など多数。
http://moriaya.jp
https://www.facebook.com/aya.mori1
撮影 萩庭桂太
1966年東京都生まれ。
広告、雑誌のカバーを中心にポートレートを得意とする。
写真集に浜崎あゆみの『URA AYU』(ワニブックス)、北乃きい『Free』(講談社)など。
公式ホームページ
https://keitahaginiwa.com