2004年から8年間、ミス・ユニバース・ジャパンの公式栄養コンサルタントを務めたアンギャルさん。
「2007年、森理世さんが優勝したときはとても嬉しかったですね。彼女はダンサーだったこともあり、痩せる必要も太る必要もないバランスの取れたボディでした。美しかったですね」
そのとき、つけていたリップグロスの香りを嗅ぐと、その輝かしい光景が蘇ってきます。
「そのリップグロスをまだ持っています。つけると、ピーチの香りがして、メキシコシティで行われたミス・ユニバース世界大会の熱気や緊張の一瞬や、発表された時の嬉しさが、目の前に見えるようにすぐに蘇ってきます。香りは記憶を鮮やかに蘇らせます。香りはパワフルですね」
仕事にも前向きに取り組むエリカさんは、きっとどのミス・ユニバース・ジャパンにも想いを注ぎ、全力を尽くしてこられたのでしょう。
何よりもその人のパズルのピースを理解し、組み合わせていくということも、一緒に楽しんでおられたに違いありません。
「ミス・ユニバース・ジャパンに選ばれた人のなかには、太らなければならない人もいました。日本のモデル業界の基準が厳しく、とても痩せていないといけなかったからです」
今、美の基準が画一的なことが、たくさんの女性を苦しめているとエリカさんは考えています。
「日本の20代の4人に1人が痩せ過ぎだという問題もあるようです。先日、順天堂大学の先生のお話を伺ったのですが、栄養の偏りで、若い女性の糖尿病が増えていると。例えば以前取材した10代の女性の食事は、グミとアイスクリームが朝ごはん、昼はパンケーキ、夜はポテトチップスという感じでした。そんな魚も野菜も食べない生活をしていたら、うつ病になったり生理不順になったり、体が悲鳴をあげてもおかしくありません」
痩せている=美しい、というのは間違った発想。その人の身体の個性をまず肯定することが大事だと、エリカさんは考えます。
「ボディ・ポジティヴィティが大事。身体のdiversity(多様性)を認めることからですね。日本はそれが狭い。美の基準が狭すぎます。異性からも褒め言葉がない。女性に厳しい。そういうことも影響していると思います」
美=若さという考えもいまだに消えません。
「私はアンチエイジングや美魔女という言葉には違和感があります。でも多くの女性が、若ければいい、とばかりに、SNSなどで写真を加工する。皺を消す。そのツルツルの肌を見た同世代の女性は、鏡で自分の皺を見てがっかりする。そうして、自尊心が傷つく。つまらないことです。私は今54歳ですが、若作りはしません。皺も育っています(笑)。でも今の年齢を大事にしたい。誰でも歳をとります。ありのままを受け入れましょう」
フランスでは、歳を重ねたマダムに憧れを抱く人が多いようです。
「若い女性の美しさは平面的。年齢を重ねていくことで、もっと3Dで多面的な美しさを得ることができるんです。歳を重ねた経験こそが、人を輝かせるんですよ」
その3Dな美しさを体現しているのが、エリカ・アンギャルさん。健康と美は生きがいにもつながっている。幸せのパズルの一つずつを見直して、多面的な美しさを目指したいものです。
●インフォメーション
これまでグルテンフリーや、和食の素晴らしさを提案してきたアンギャルさんですが、6月発売予定の新刊では「アルカライズ」を提案します。
「身体を少しアルカリ性に傾けると、本来体に備わっている免疫が最もよく機能して健康でいられるのですが、食べるものすべてをアルカリ性にする必要はありません。アルカリ性の食材70%、酸性の食材30%くらいを目標にするとよいと思います。そこで昔ながらの日本食がやはり良いんですよ。今はみなさん、コンビニ食と肉食の人が増えているけれど、それでは海藻も魚も足りない。一汁三菜のバランスは素晴らしいんです」
近刊のお知らせはしばしお待ちください。
●エリカ・アンギャル 公式サイト
https://www.erica-angyal.com
取材・文 森 綾
フレグラボ編集長。雑誌、新聞、webと媒体を問わず、またインタビュー歴2200人以上、コラム、エッセイ、小説とジャンルを問わずに書く。
近刊は短編小説集『白トリュフとウォッカのスパゲッティ』(スター出版)。小説には映画『音楽人』の原作となった『音楽人1988』など。
エッセイは『一流の女が私だけに教えてくれたこと』(マガジンハウス)など多数。
http://moriaya.jp
https://www.facebook.com/aya.mori1
撮影 萩庭桂太
1966年東京都生まれ。
広告、雑誌のカバーを中心にポートレートを得意とする。
写真集に浜崎あゆみの『URA AYU』(ワニブックス)、北乃きい『Free』(講談社)など。
公式ホームページ
https://keitahaginiwa.com