「歌う」一方で「演じる」ことについても、自身のメソッドを確立しようとしている堂珍さん。
「僕もデビュー当時には、まさかこれだけ舞台をやるとは思っていなかったですよ(笑)」
2001年、テレビ番組のオーディションでCHEMISTRYとして選ばれた頃は、歌いたいという気持ち一色だったようです。
「前回のインタビューで話しましたが、舞台に出るようになったきっかけは、辻仁成さんの音楽劇。辻さんの生き写しのような主人公を演じたんです。そこからの『RENT』かな。戦争映画にも出たことがありました。潜水艦乗りの船長の役。そのとき共演したのは、年上の役者さんが多かったですね。舞台は、同世代やちょっと年下の俳優も多い。いろんな世代の人と仕事ができるのは楽しいです」
堂珍さんは、観客として舞台を観ることにも熱心なようです。
「舞台を観ていて、ときどき、この役を自分がやったらどうだろうと、苦労を想像したりしてしまいます。先日、ビートルズの物語を描いた『BACK BEAT』を観たんですが、本当、大変そうだった。テンポ感とか、間合い。舞台が成熟するまでに、どれだけ体を酷使するんだろう、と。僕はそんなに器用じゃないから、セリフも動きも体が覚えるまでかなり反復します。今回のグレブの場合、『任務をまっとうする」ことにアイデンティティを保っていた人間が、愛という人としての正解を見つけてしまうその揺れ動きを見せたいです」
歌うこと、演じること。切り替えるスィッチはあるのでしょうか。
「特に切り替えようとは思わないんです。自然に、今日はこれで行こう、という感じ。たまにSNSでファンの方がコンサートでの感想を『今日の堂珍さん、舞台っぽかった。佇まいが凛々しすぎた』みたいなこと書いていて。なんかやりすぎてるのかな、と(笑)。ただ、例えばCHEMISTRYのときも、相方が歌っていても、立ってそこにいるだけで何か語れることがあるんじゃないかなとは、思っています」
ファンの皆さんの感想や、熱い視線もしっかり届いている様子。
「みなさん、すごく一生懸命見てくださっているんで。一度、泣き崩れるシーンのときに、ふっと横を見たら一番前の人が下から覗き込んでいて、それはちょっと、と思いましたが(笑)。ぜひ、リラックスして観てくださいね」
『ANASTASIA』での堂珍さんを観られるのはもうすぐ。最後に見どころを教えてもらいました。
「実はこの物語、香りがアーニャの記憶を呼び覚ます大きなポイントになっているんです。それはぜひ、劇場に足を運んでご覧ください」
丁寧に自分の思いを言葉にする堂珍さんは、ここ2年でまたぐっと深みのある表情に。CHEMISTRY 、ソロ、舞台のトライアングル効果の良い響き合いに、どれも目が離せません。
⭐️ミュージカル『アナスタシア』公式サイト
https://www.anastasia-musical-japan.jp/
取材・文 森 綾
フレグラボ編集長。雑誌、新聞、webと媒体を問わず、またインタビュー歴2200人以上、コラム、エッセイ、小説とジャンルを問わずに書く。
近刊は短編小説集『白トリュフとウォッカのスパゲッティ』(スター出版)。小説には映画『音楽人』の原作となった『音楽人1988』など。
エッセイは『一流の女が私だけに教えてくれたこと』(マガジンハウス)など多数。
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https://www.facebook.com/aya.mori1
撮影 萩庭桂太
1966年東京都生まれ。
広告、雑誌のカバーを中心にポートレートを得意とする。
写真集に浜崎あゆみの『URA AYU』(ワニブックス)、北乃きい『Free』(講談社)など。
公式ホームページ
https://keitahaginiwa.com