コロナ禍もあり、ご両親の老齢化もあって、一旦、神奈川の実家に暮らすことになった瀬戸さん。そこには、まるで小津映画を彷彿とさせるような、静かな暮らしがありました。
「実家は日本家屋。お香、畳、庭の季節の草花、和食の香りって落ち着きますね。気がつけば仏壇に1日3回は正座して話をしています。もちろん、毎日香を立てて。30年以上も都心のマンション暮らしでしたが、年齢を重ねてきたこともあり、日本家屋の生活も良いものだなあと感じております」
数年前に少し体調を崩し、食生活もさらに見直しました。ファスティングの先生に出会い、初めて10日間のファスティング体験も。
「実際には1週間ですね。前後3日ほどは普通食からファスティング食へ、ファスティング食から普通食へと戻していく時間。最初はお酒を抜くのは辛かった(笑)。1週間は野菜ジュース、酵素ジュース、サプリ。そうするとね、終わった後、本当に五感が鋭くなるんです。調味料にも敏感になる。それからは”まごわやさしい”(豆、ゴマ、わかめ=海藻、野菜、魚、椎茸=キノコ、芋類、酵素玄米)食材を大切に、1日1〜2食の生活をしています」
親御さんのことを思いながら、日々を丁寧に暮らす瀬戸さんは『東京物語』の紀子のメンタリティを演じるのにふさわしい人なのでしょう。
歴史ある町に生まれ育ち、日本の芸事が身にしみ込んでいる彼女が正座している姿には、なんとも美しい趣があります。
「楽屋は、テーブルと椅子を好まれる方もいますが、私は畳でお願いしています。正座が楽なので」
根っから新派向き。30年をそこで俳優として生きてきて、今思うことは。
「私はタレントとか映像向きでもないでしょうし。最初に玉三郎さんが『新派向きね』とおっしゃったことは間違いではなかったのかなあ、と思えてきました。辛いことがあっても、辞めないできたし。辛いだけじゃなくて、いいこともたくさんあります。お客様が一人でも待っていてくださったら、私は頑張れます。そうですよ、皆様に支えられているんです。感謝しかありません」。
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取材・文 森 綾
フレグラボ編集長。雑誌、新聞、webと媒体を問わず、またインタビュー歴2200人以上、コラム、エッセイ、小説とジャンルを問わずに書く。
近刊は短編小説集『白トリュフとウォッカのスパゲッティ』(スター出版)。小説には映画『音楽人』の原作となった『音楽人1988』など。
エッセイは『一流の女が私だけに教えてくれたこと』(マガジンハウス)など多数。
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撮影 萩庭桂太
1966年東京都生まれ。
広告、雑誌のカバーを中心にポートレートを得意とする。
写真集に浜崎あゆみの『URA AYU』(ワニブックス)、北乃きい『Free』(講談社)など。
公式ホームページ
https://keitahaginiwa.com