「2月19日、渋谷プレジャープレジャーでのライブは、いつにも増してこだわりが。八方不美人のメンバーで脚本家でもあるエスムラルダさんが脚本を書き、朗読と音楽のコラボレーションライブにいたします。」
「『renaître』(ルネートル)のなかで、『あの頃私は』という曲だけが完全なオリジナルなんです。その曲に着想を得て、エスムラルダさんが脚本を書き下ろしてくださいましたの。私は中島みゆきさんが大好きなのですが、今回のコンサートはみゆきさんの『夜会』が世界観的に近いかもしれません。」
歌。衣装。物語。そして、Kayaさんがステージでも力を入れているのが香りです。
「昔、高校時代は、浴びるようにシャネルのエゴイストプラチナムを使っていました。その後四国でバンド活動をしていた頃、ライブではゴルチェのクラシックを。そして上京してすぐ結成したバンド時代はミュグレーのエンジェルを使っていました。2008年にメジャーデビューをしたときは、ディオールのポワゾン。これは今もなのですが、ステージ中に香水を振りまいて、幕が開くとその香りが客席に流れ込み、香りとともに現れるという演出をしています。2012年に『TABOO』というシングルを発売したのですが、その時に美輪明宏さんが使っていらっしゃる香水「TABOO」をファンの方が探し出してプレゼントしてくださったり。そのときの曲、衣装によって香りを考えるんです」
さて、今回はどんなイメージの香りが登場するのでしょう。
「今はもうずっと、ゴルチェのフラジャイル。
もう廃盤なので、ファンの方が探して送ってくれるものを大切に使ってます。スノードーム型で、中にイブニングドレスを着た女性がいる面白い容器なんです。重めで豊穣な、艶っぽい香りです。私は聴覚だけでなく、視覚でも嗅覚でも想いを伝えたい。香りは表現の一部なんです。普段、遊びに行くときは場をわきまえて、食事に行くときはつけません。でもバーに行ったりするときは、今はゲランのロム・イデアルをつけたりしていますね」
フラジャイルは、トップノートにオレンジやラベンダー、ミドルノートにチュベローズ、ラストノートにウッドやムスクが香る多層的な構造の香り。まさにさまざまな感情を胸に秘めている成熟した女性のようです。
「ステージは総合藝術。香りも音楽も記憶に直結するものでしょう。理屈じゃなくて、あの時のあの香りを思い出すというように。だから表現として、香りと音楽は切っても切れない関係にあると思うんです」
耽美、という言葉がありますが、まさにKayaさんはそういう人なのかもしれません。
「ありがとうございます。美しいものは好きです。特に翳りのある美しいものが好きです。明るい美しさよりも。幼稚園の頃も、みんなが戦隊系に夢中でも私は『ゲゲゲの鬼太郎』の世界が好きだった。みんながB’zやMr.Childrenを聴き始めた頃、BUCK-TICKを好きになって。みんなが洋楽ロックを聴き始めると、シャンソンに引っ張られましたから」
ビジュアル系というジャンルを含みつつ、翳りある美しさを作り上げるシンガーが、今、シャンソンをうたう。それはとても新しいチャレンジだと言えそうです。Kayaさんのつくる美の物語をぜひ体感してみてください。
取材・文 森 綾
フレグラボ編集長。雑誌、新聞、webと媒体を問わず、またインタビュー歴2200人以上、コラム、エッセイ、小説とジャンルを問わずに書く。
近刊は短編小説集『白トリュフとウォッカのスパゲッティ』(スター出版)。小説には映画『音楽人』の原作となった『音楽人1988』など。
エッセイは『一流の女が私だけに教えてくれたこと』(マガジンハウス)など多数。
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撮影 萩庭桂太
1966年東京都生まれ。
広告、雑誌のカバーを中心にポートレートを得意とする。
写真集に浜崎あゆみの『URA AYU』(ワニブックス)、北乃きい『Free』(講談社)など。
公式ホームページ
https://keitahaginiwa.com
データビジュアル協力・Kaya