正調アナウンス、昭和歌謡、漫才、落語。趣味だったものが今の仕事に集約されている福島さん。そしてまた漫才のシーズンがやってきたのです。
きっかけは、MBSラジオの夜の看板番組『ヤングタウン』日曜日にレギュラー出演している、錦笑亭満堂さん(三遊亭とむ)との出会いでした。
「入社6年目でヤンタン日曜日の笑福亭鶴瓶さんのアシスタントに入らせてもらって、そこへ満堂さん、つまり当時のとむさんが来て、呑み友達になって、仲良くなって。鶴瓶さんが『おまえら、仲ええねんやったら、漫才やれや』とおっしゃって。満堂さんも『M-1出たい。かっこいいじゃん』と言い出して。僕は『放送局の系列も違うし、どうなのかな』と言ったんですが、上司に相談したら、『ええんちゃうん。どうせ決勝も行かれへんやろし』と言われて」。
「どうせ決勝も行けないし」という言葉に闘志を燃やした福島さん。2018年に二人は『ヤングタウン』というコンビ名で出場しますが、あえなく3回戦敗退。
「2022年にも出場して3回戦敗退。そして去年は毎月ネタおろしライブをやり、練習を積みました。うちの会社は副業はNGなんですが、番組の企画ということで。自腹で衣装も作りましたよ。3回戦を突破すると、会社もすごく応援してくれるようになり、会議室で社内で働く人たちに、ネタ見せの時間を作ってもらったり。『頑張ってやー』と声援をもらい、ありがたいなあと思いました。関西のお笑い熱の高さかもしれませんね」
しかし結果は準々決勝敗退。
「今年は浅草や名古屋など大阪以外のハコでもやります。社内で不要になっていたマイクスタンドをもってきて、漫才用のサンパチマイクを買いました。満堂さんに音を拾うエリアをわかってもらうためです!」
満堂さんとの出会いが、連れてきた再びの漫才への挑戦。福島さんは、それもありがたいことと受け入れているようです。
「満堂さんとの出会いは大きい。僕は自分の意志以上に、人との出会いに引っ張ってもらって、ここまで来られたと思っていますから。大学の先輩にM-1に誘われて、その後、ABCの人が面白いと言ってくれて、そこから毎日放送の試験につながって。また満堂さんに漫才の道ももらって。本当にありがたいことです」
出会いが次の出会いを運んでくる人生。でもそこには福島さんの、ひとつひとつの出会いを大切に思う気持ちがあったからなのでしょう。
成長ができる人はそこから広がる世界も大きいに違いありません。福島さんの仕事は、ますますたくさんの人を楽しませそうです。
取材・文 森 綾
フレグラボ編集長。雑誌、新聞、webと媒体を問わず、またインタビュー歴2200人以上、コラム、エッセイ、小説とジャンルを問わずに書く。
近刊は短編小説集『白トリュフとウォッカのスパゲッティ』(スター出版)。小説には映画『音楽人』の原作となった『音楽人1988』など。
エッセイは『一流の女が私だけに教えてくれたこと』(マガジンハウス)など多数。
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撮影 斉藤有美
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