自分では無意識ながらも、昔ながらのものを大事にしている坂本さん。4歳のとき、水木しげるさんの本を買ってくれたお祖父様へのお墓参りも欠かしません。
「お墓参りは毎月行きます。普通の近所のお寺に墓があるので、祖父の月命日には仕事のない日は必ず行きます。墓前にぬかづいて、お線香をたいて。コロナ禍のときは毎日のように「どうしたもんかしら」と、墓のなかの祖父に相談に行っていました。ソーシャルディスタンスも関係ない場所だったし」
コロナ禍では、すべての演者が「これまで通り生きていけるかどうか」の瀬戸際にありました。そんななかで、心を落ち着ける行為としてお墓参りが普通にあったのは、坂本さんにとって幸せなことでした。
「線香の香りに包まれると、自分が世の中でどういう位置にいるのかを振り返ったり、お世話になった人達の顔が浮かんだりします。どうしたいのか、どうありたいのか、どう生きたいのかと、思索に耽るんです。昔はお墓の前で一心に手を合わせている人を見ると『そんなに何を拝んでいるんだろう』なんて思っていましたが、今は同じことをしている自分がいます」
自らも大きな声を出し、人に囲まれる仕事をする坂本さんにとって、お墓参りとはどこよりも静かで一人になれる時間。とはいえ、お墓のなかには自分に無性の愛を注いでくれた身内がいる。そんな思索の場が、坂本さんの芸そのものを支えているのかもしれません。
●活動弁士 坂本頼光 in 十三 vol.13
5月25日(土) 18:45 開場 / 19:00 開演
●居島一平・坂本頼光の「暗黒迷画座」福岡公開収録~刑事コロンボ編~
6月1日(土)14時開演(13時半開場)
●第15回記念!博多活弁パラダイス「坂本頼光&居島一平 二人会~活弁v.s.シネ漫談ライブ~」
6月2日(日)14時開演(13時半開場)
取材・文 森 綾
フレグラボ編集長。雑誌、新聞、webと媒体を問わず、またインタビュー歴2200人以上、コラム、エッセイ、小説とジャンルを問わずに書く。
近刊は短編小説集『白トリュフとウォッカのスパゲッティ』(スター出版)。小説には映画『音楽人』の原作となった『音楽人1988』など。
エッセイは『一流の女が私だけに教えてくれたこと』(マガジンハウス)など多数。
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撮影 萩庭桂太
1966年東京都生まれ。
広告、雑誌のカバーを中心にポートレートを得意とする。
写真集に浜崎あゆみの『URA AYU』(ワニブックス)、北乃きい『Free』(講談社)など。
公式ホームページ
https://keitahaginiwa.com