秋本さんは先日、お母様を亡くされ、故郷の松本にしばらく滞在されていました。
「2週間居ました。東京に出てきてから、母とは一番濃い時間を過ごしましたね。最後は同じ部屋で寝泊まりできましたので。私は父に似ていると言われますが、話し方や間の取り方は母に似ているかもしれません。妹とも話すのですが、母は前に出るタイプではなく、いつも穏やかににこにこしていて、でも何かあったときには気丈な人でした。和裁も洋裁もできて、妹と私の着るものはほとんど母のお手製でした。絶対に真似できないですね」
穏やかでにこにこしていて、いざとなったときは気丈。それは、やっぱり秋本さんも母親譲りなのでしょう。
長く芸の世界で生きてきても、なぜそんなふうに、いつも新鮮な笑顔でいられるのかと、尋ねてみました。
「この仕事は常に『初めまして』から始まります。それがフレッシュで楽しくいられる理由かもしれませんね。それと、私は『できます』と思っていないので、常に人の演技を見るのも好き、稽古場にいるのも好き。格好つけてもバレますから、自分をごまかさない。人間を扱って表現する仕事だから、どんな人がいたっていい。幾つになっても、人生が続く限り、体が動いて頭が回るうちは続けていきたいと思っています」
「自分をごまかさない」という姿勢を貫いてきた人の笑顔が、真っ直ぐに心に残りました。
⚫︎ミュージカル
『モンパルナスの奇跡〜孤高の画家モディリアーニ』公演情報
2024年6月15日(土)〜23日(日)東京・よみうり大手町ホール
http://montparnasse-musical.com/
取材・文 森 綾
フレグラボ編集長。雑誌、新聞、webと媒体を問わず、またインタビュー歴2200人以上、コラム、エッセイ、小説とジャンルを問わずに書く。
近刊は短編小説集『白トリュフとウォッカのスパゲッティ』(スター出版)。小説には映画『音楽人』の原作となった『音楽人1988』など。
エッセイは『一流の女が私だけに教えてくれたこと』(マガジンハウス)など多数。
http://moriaya.jp
https://www.facebook.com/aya.mori1
撮影 萩庭桂太
1966年東京都生まれ。
広告、雑誌のカバーを中心にポートレートを得意とする。
写真集に浜崎あゆみの『URA AYU』(ワニブックス)、北乃きい『Free』(講談社)など。
公式ホームページ
https://keitahaginiwa.com