ラジオやイベントでのMC。俳優として演じる以外の仕事でも培ったものを、また俳優の仕事に活かして。山中さんが大事にしているのは、ファーストインプレッションだと言います。
「初めて台本をいただいて読んだときに、そのシーンが頭のなかにふわっと浮かぶ。その役の目線でそのシーンを想像するじゃないですか。その最初のイメージを大事にしています。何度も何度も読むと、ああ、あの手がある、この手がある、と、結構アイデアが出てきます。それはそれで大切なことなんですが、一人でつくっちゃうと、共演者と対峙したときに、ダメなんですよ。独りよがりになっちゃって。ここで初めて起こっていることなんだと思えない用意された芝居になっちゃう。一番最初に感じたことを素直にやってみる。それを共演者と擦り合わせながら芝居にしていく。」
その柔軟な姿勢こそが、ベテランの妙味ということなのかもしれません。
「僕も若いときはそうだったかもしれませんが、爪痕を残しにいっちゃうんですよね。あいつ面白いなと思われたいとか、また声をかけてもらいたいとか思って。無駄なことを一生懸命やっちゃう」
舞台でも、その「最初の気持ち」は大事にしています。
「舞台は1ヶ月くらい同じことを稽古しますから、セリフは慣れてきます。でも感情は慣れてはいけないわけです。見ている人の気持ちが動くためには、そのとき、そのとき、役者の気持ちが動いてセリフが出てくるのが一番です」
『相棒』に24年携わることにも、その山中さんの演技に対してフレッシュであり続ける気持ちは生きています。
「24年の間に、主役の水谷豊さんはじめ、共演者の皆さん、人生のいろんな変化があるわけですよね。僕だって、親父が死んだり、結婚したり。ちょっとした怪我をしたり。だけど、皆さん、それをまったく見せないで笑顔で現場に来るんですよね。そして役をまっとうする。水谷さんの精神力は特にすごいですよ。そばで演技ができて、本当に光栄です」
素晴らしい俳優の背中を見て、また心を真っ白にできるということ。山中さんが若々しい印象のままなのはそんな心があるからかもしれません。いつも見ている人を喜ばせることを考える彼の演技はこれからもどんな場所でも必要とされていくことでしょう。
山中さんの出演番組
●『相棒season23』(テレビ朝日系)
2024年10月スタート
芹沢慶二役
https://www.tv-asahi.co.jp/aibou/
●4K時代劇スペシャル『無用庵隠居修行8』(BS朝日)
2024年9月23日(月)19:00~20:54
木村文蔵役
https://www.bs-asahi.co.jp/muyouan08/
●BS時代劇『雲霧仁左衛門ファイナル』(NHK BS・BSP4K)
2025年1月スタート(全8回)
漁師の留造役
https://www.nhk.jp/g/blog/8cahqy25v/
ヘアメイク 茂手山貴子
https://moteyama.com/
取材・文 森 綾
フレグラボ編集長。雑誌、新聞、webと媒体を問わず、またインタビュー歴2200人以上、コラム、エッセイ、小説とジャンルを問わずに書く。
近刊は短編小説集『白トリュフとウォッカのスパゲッティ』(スター出版)。小説には映画『音楽人』の原作となった『音楽人1988』など。
エッセイは『一流の女が私だけに教えてくれたこと』(マガジンハウス)など多数。
http://moriaya.jp
https://www.facebook.com/aya.mori1
撮影 萩庭桂太
1966年東京都生まれ。
広告、雑誌のカバーを中心にポートレートを得意とする。
写真集に浜崎あゆみの『URA AYU』(ワニブックス)、北乃きい『Free』(講談社)など。
公式ホームページ
https://keitahaginiwa.com