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    第223回:若村麻由美さん(俳優)

《3》物語の中の香りをどんな香りだろうと想像する。それはとても素敵なこと

 『源氏物語』には、香りで人の想いや念のようなものを表現している箇所があちこちに見られます。

「六畳御息所がふと目覚めて、気がつくと、自分の体から護摩を焚いた香りがする。それは葵上の病気を僧侶たちが護摩を焚いて祈祷して治そうとしている、その匂いなんですよね。自分は寝ていたのに、なぜそんな香りがするのか。ああ、自分から抜け出してしまった魂が生き霊となってそこへ行ってたんだ、と。そのことに気づく怖さ。そういうことは現代ではなかなかないことでしょうけど、たまに虫の知らせというのか『線香を焚いていないのに線香の匂いがする』みたいなこと、話す人がいますよね。そうしたら親しい方の訃報が届いて、挨拶に来てくれたのかな、というような… 。物語の中に様々な香りが表現されていて、それをどんな香りだろうと思い思いに想像する。それはとても素敵なことだと思います。今回は、せっかく舞台でさせていただくので、そういう香りのイメージも演出できたらいいなあ」

 実は若村さんは、過去に香りのある舞台で演じたことがあるそうです。

「PARCO劇場で、緒形拳さんとの『スカイライト』というイギリスのお芝居をしたときのことです。
私がペペロンチーノを作り始めるというシーンがあって、本当に舞台でフライパンにオリーブオイルをひいて、ガーリックと鷹の爪を炒めて、パスタも茹でるんですよ。本当に料理をしながら芝居をするんです。劇場中にそのオリーブオイルとガーリックの香りがいっぱいになりました。夜公演だと、客席からお腹が鳴る音が聞こえてくるくらい(笑)。それで、終演後はイタリアンを食べにいく人がいっぱいだったというそんな効果があったようです」

 なんという美味しい香りの効果でしょう。

「香りは人のいろんな感情を刺激しますよね。そこはすごく演劇的だとも言える。いつかまた香りのある舞台をやりたいと思っていたんです」

 普段から、居住空間にも香りがあることを大事にしているという若村さん。

「玄関、リビング、化粧室という感じで違う香りが漂うようにしています。白檀はお仏壇、というように」

 この日の若村さんは、伽羅の香りが似合いそうな、松竹梅唐草文様の美しい和服姿。笙の絵が刺繍された帯はアンティークだそう。洋装も和装もどちらもおしゃれな姿は、いろんな役を演じて来られた人ならではの気負わなさがあります。

「役者をやっている醍醐味は、あらゆる人間像を演じられるということだと思います。今回の演目でも、六条御息所と秋好中宮は母娘であっても全く性格が違う。全然タイプの違う女性を同時に演じるんですね。こうして平安時代の人を演じれば、時を駆けて未来の人を演じることもあるかもしれません。ボーカロイドみたいに喋るとか!?(笑)おばあちゃんのボーカロイドとか面白くないですか(笑)」

 時空を超える演技にも軽やかに挑戦していく若村さん。彼女の佇まいと語りから発する極上の香りを感じに、能楽堂を訪れたいものです。

若村麻由美さん

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『若村麻由美の劇世界』「あこがれいづる」源氏物語より

『若村麻由美の劇世界』「あこがれいづる」源氏物語より
2024年11月22日(金)~24日(日)
銕仙会能楽研修所

●SNS先行予約受付
2024年9月24日(火)18:00〜10月8日(火)
申込詳細: https://w.pia.jp/s/wakamuramayumi24ss/

●インスタグラム
https://www.instagram.com/mayumiwakamura_official/?hl=ja

●Facebook
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取材・文 森 綾
フレグラボ編集長。雑誌、新聞、webと媒体を問わず、またインタビュー歴2200人以上、コラム、エッセイ、小説とジャンルを問わずに書く。
近刊は短編小説集『白トリュフとウォッカのスパゲッティ』(スター出版)。小説には映画『音楽人』の原作となった『音楽人1988』など。
エッセイは『一流の女が私だけに教えてくれたこと』(マガジンハウス)など多数。
http://moriaya.jp
https://www.facebook.com/aya.mori1

撮影 萩庭桂太
1966年東京都生まれ。
広告、雑誌のカバーを中心にポートレートを得意とする。
写真集に浜崎あゆみの『URA AYU』(ワニブックス)、北乃きい『Free』(講談社)など。
公式ホームページ
https://keitahaginiwa.com


2024.9.24 written by 森綾
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