今度の公演『たかが十年の祭り』で取り入れる日本の伝統芸能は、祭り。
「北投が温泉地であるということも取り入れて。8月には、脚本家の川名幸弘さんと一緒に街のリサーチにも行きました」
さてどんなストーリーになり、どんな祭りが舞台を盛り上げるのか。
台湾との繋がりは年々深くなっていますが、長期滞在して慣れないのが、八角の香り。
「僕は割と平気なんですが、その香りに疲れてしまうメンバーもいるみたいで。『これまた八角が入ってるよね』『入ってないですよ』みたいな会話が聞こえてくるんですよ(笑)。とにかく用意してくださるお弁当も全部その香りがする。もう無理だ、と言って、バーガーキングに行って、エビバーガーを頼んだら、それも八角が入っていたと(笑)。で、僕も大丈夫だと思っていましたが、去年、台湾のドラマに出演させてもらって2ヶ月近く滞在していたら、やっぱり2週間超えたあたりからはちょっと疲れてきました。夜な夜なYouTubeで、日本の街中華で炒飯をつくっている映像を見ていたりして。でもそれは、逆に海外の人が日本に来たらずっと醤油の匂いがする、味噌汁の匂いがすると思うのと同じなんでしょうね」
国やそこに住む人たちの個性を知って、交流していく。心が通じ合うことを一番に思う演劇人だからこそ深い通じ合いがありそうです。
「旅をしたり、役者になりたいと踏み出してきて、僕は結局、劇場を媒介としたご縁のなかで人と出会って、動いてきたんだと思います。そこにいつの間にか、どっぷりハマっている自分がいる。事務所に所属していたらまた違う感覚なのでしょう。でもそれはやっぱり”待ち”の姿勢だったと思う。役をくれるプロデューサーに気に入られる自分になろうと悶々としているような。自分で生み出し、先駆けて行動する勇気が必要だった。そこから一歩踏み出せたのが『ゴツプロ!』だったんです。攻めの姿勢になれたタイミングが、40歳だった」
塚原さんの話を伺っていると、つくづく人生にはタイミングがあり、それを勇気をもって素直につかみ、無我夢中で頑張った人がうまくいくのだろうという気がします。
たかが10年、されど10年。これから10年の「ゴツプロ!」は、台湾を足がかりにさらなるアジアへ羽ばたいていくことでしょう。
●ゴツプロ合同会社
https://52pro.info/
取材・文 森 綾
フレグラボ編集長。雑誌、新聞、webと媒体を問わず、またインタビュー歴2200人以上、コラム、エッセイ、小説とジャンルを問わずに書く。
近刊は短編小説集『白トリュフとウォッカのスパゲッティ』(スター出版)。小説には映画『音楽人』の原作となった『音楽人1988』など。
エッセイは『一流の女が私だけに教えてくれたこと』(マガジンハウス)など多数。
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撮影 萩庭桂太
1966年東京都生まれ。
広告、雑誌のカバーを中心にポートレートを得意とする。
写真集に浜崎あゆみの『URA AYU』(ワニブックス)、北乃きい『Free』(講談社)など。
公式ホームページ
https://keitahaginiwa.com